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113.変革のとき2
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「内々の話だから、民間企業の名前は伏せられているが、情報によると本社が東京の大企業らしい。給与や待遇等は、下手すると地方の企業よりは安定していると思う。また、退職金に関しても、公務員以上にもらえる可能性もあるし、その時の企業の状況に左右されると思う」
公務員は、冒険はできないが、安定はしている。
民間企業は冒険だな……。
星野はそう思う。
このご時世だ。
大企業でも負債を抱えるケースも増えている。
もし、今回、星音堂を買ってくれた企業がそんなことになったら……。
元の事業が何系の企業なのかはわからないが、最初に切られるのは、星音堂のような、本業とは関係のないところだろう。
ただ、このホールは市でも重要な文化の拠点になっていることは間違いない。
どうしても場合は、市が手を出す可能性はある。
悩むところだと思った。
氏家は、公務員を退職した身分である。
雇用が継続されるかどうかが心配なところだろう。
高田はどうだ?
結構な年である。
本庁に戻るのが賢明とは思えない。
それに、退職が一番近い人だ。
数年で業績が傾くような企業なら、こんな地方のホールの経営に手を出すわけがない。
高田の退職金は安定しているだろう。
尾形はどうかな?
尾形は家族も抱えている身だ。
公務員に戻るのが得策だと思うが……。
吉田と三浦はまだまだ若い人材だ。
公務員として市に戻るのがいいな。
篠崎は?
彼は、あんまりショックを受けている様子もない。
まっすぐに水野谷を見ていた。
なんだか笑ってしまう。
星音堂が好きで地方公務員になった男。
残るんだろうな……。
あいつ。
公務員が目的ではないのだから。
なんだか笑ってしまう。
人の心配ばかりしている場合ではないな。
自分のことも考えないと。
どうしたものか。
こんな調子だし。
いまさら本庁なんてなー……。
「こんなことをみんなに強いるのは本当に心苦しい。課長として、大したこともしてやれない。本当に申し訳ないと思っている」
水野谷はそう言うと頭を下げた。
「課長のせいじゃないですよ」
「そうですよ。おれらなりに頑張ってきたけど……」
「星音堂だけのせいじゃないじゃないですか」
この不景気。
地方の過疎化。
地方の財政は厳しい。
星音堂の業績が悪いから切られるのではないのだから。
ただ、余計なものは切り離していかないと、市自体が成り立たなくなってきているのだ。
國も当てにならないし。
なんでも地方に押し付けてくる。
地方は疲弊しているのだ。
「よく考えよう。自分のことなんだから」
氏家の言葉に、一同は力なく頷いていた。
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