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113.変革のとき3
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「ただいまー」
氏家が玄関を入ると、妻が顔を出した。
「あら。どうしたの?変な顔」
「わかる?」
「長く見ているもの。なにかあったの?」
妻は苦笑する。
彼女も年を取ったものだ。
氏家は、コートを脱ぎ、居間に入ってソファに腰を下ろす。
「また仕事がなくなるかもしれないな~……」
「首なの?」
「そうかも」
彼女は大きな声で笑う。
「いいじゃない!今度は諦めて、私と旅行に行きなさいよ」
妻は氏家の隣に座る。
「そういう生活は性分に合わないんだよねえ」
「じゃあ、パートでもアルバイトでもしたら?」
「そうだな……」
そうだよな。
星音堂で拾ってもらったのも、何かの縁だっただけの話だ。
本来なら、退職して、自宅でぼーっとしているだけだもの。
「シルバー人材でも入るか」
「いいわね。どんな特技で登録するつもり?」
「……特技、ないかもね」
「じゃあダメじゃない。旅行しかないね」
「そうかもね」
少し落ち込んでいた氏家だったけど、妻のあっけらかんとした態度になんだか気持ちがほぐれた。
だめならだめじゃない。
高齢者は扱わないといわれたらそれまでだ。
諦めて、なにか探そう。
彼はそう思った。
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