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113.変革のとき12
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「どうせ、今さらですけどね。でも、あんまりなことなら辞めると思います」
星野が人に食って掛かるなんて珍しい。
職員たちは緊迫したムードに黙っていた。
だけど、章は笑顔だ。
「そんなことを言わないで欲しいよ。君は、星音堂にはなくてはならないアイディアマンだからね。民間になって、競争が激しくなるホール事情だから。君のような人は必要なんだ」
「必要とされても、決めるのはおれです」
「それはそうだね。こっちは強要できない。だけどね。今度、ホールを任せるうちのスタッフにぜひ、力を貸してほしいんだ。彼もそう望んでいるしね」
「彼?そんなのおれは知りませんよ。そっちの事情じゃないですか」
「そういわないで。……遅いね」
章は岩見を見る。
「もう到着してもいい頃なんですが……」
その様子を見て、水野谷も吹き出す。
「課長、なに笑ってんですか」
星野は大切な話をしているのに……と面白くない顔をする。
と。
「すみませんー!新幹線が遅れちゃって……」
ばたばたと騒がしい音がしたかと思うと、女性と男が現れた。
「え?え?」
一同は、目が点になっている。
それをよそに、二人は章のとなりに立ち、息吐く間もなく笑顔を見せた。
「お久しぶりです!みなさん」
「ご無沙汰しておりました。申し訳ありません。私がついていながら……」
「この雪だけは、君にもどうしようもできないよ。奥川くん」
章はにっこり笑って、口を開く。
「星音堂の管理を任せるうちのスタッフ。熊谷蒼と、その秘書の奥川未唯子です。協力してやってくれると嬉しい」
雪まみれになって、ほっぺもまっかっかだけど。
そこにいたのは懐かしい顔。
蒼その人だった。
「すみません。ご無沙汰してしまって。でも、またみんなと仕事ができるのはうれしいです」
彼の笑顔。
久しぶりだ。
氏家も。
高田も。
尾形も。
みんな笑う。
そして、星野も。
「この大馬鹿野郎。いまさら、ノコノコ戻ってきやがって」
「星野さん。そんなこと言わないでくださいよー……」
蒼は目に涙いっぱい。
本当にうれしいのだろう。
氏家も高田も尾形も。
星野まで、目頭が熱くなった。
水野谷は、にこにこするばかり。
「課長は知っていたんですか?」
氏家はこそっと囁く。
「随分前の打ち合わせの時にね。蒼が来て。おれも驚いた。だけど、あいつなら安心だと思ったからさ」
「言ってくればいいのに」
「機密事項だからな」
「それはそうですね」
星野に小突かれて、首に腕を回されて締められている蒼。
中学生の再会みたいだった。
「この馬鹿野郎~!」
「星野さん!勘弁してくださいよ!!」
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