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02 雨夜2
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「そう言えば、関口帰ってきたんですってね」
ふと思い出したように、吉田が声を上げる。
関口?
ああ。
すっかり忘れていたが。
昨晩、関口という男に会ったことを思い出す。
「そうそう。あいつ、海外留学から帰ってきたそうだ。市民オケのコンマスやり始めたらしい。またちょくちょく遊びに来るだろう」
ちょくちょくって言っても……。
いい大人なんだから、ここに遊びにきても仕方ないだろうと思う。
だけど、蒼以外の職員たちは嬉しそうに彼のことを話している。
「また賑やかになるなあ」
星野の脇の高田も、書類から視線を上げて苦笑する。
「いい男になったんじゃないのか?」
年長の氏家も同様だ。
子どもの成長を楽しみにしている感ありありである。
「とんだ変わり者だったからな。あいつ」
水野谷までも嬉しそうだった。
なんなのだろう。
皆で……。
昨日。
彼と初めて逢ったばかりの蒼にとったら、彼がどういう人間で、星野たちとどんな関係性なのか知る由もない。
どうしてみんなが彼のことを知ったように話すのか不思議だった。
なんだか自分だけ取り残されてしまったみたいで、つまらない。
素直に尋ねれば、教えてくれる事なのだろうけど。
何故か、関口のことを口にしたくない自分がいる。
軽くため息を吐いて、蒼は仕事に戻った。
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