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04 雨の日の再会5
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「それくらいいいじゃないか。看病してやったんだぞ」
あっけらかんと言われても困ってしまう。
しかし、それを言われると弱い。
蒼は、しょんぼりして関口を自宅に招きいれた。
今日は、ちょっとは材料がある。
何にしよう。
時間はかけないほうがいいだろう。
パスタにするか。
お湯を沸かしてからちらっと部屋で寛いでいる彼を見る。
押し売りのセールスマン並のずうずうしさだ。
育ちのいい坊やだなんて思った自分が浅はかだった。
大きくため息を吐いて部屋にもどった。
「話って?」
テーブルを挟んで自分も腰を下ろす。
お湯は、まだ沸かないだろう。
関口は本棚を見つめていたが、ふと蒼に視線を戻す。
「風邪治ったのかと思って。二週間も見ていなかったからな」
まただ。
時々。
すごく関口は、優しい。
すごく口が悪くて怖いけど、すごく蒼のことを心配してくれていると言うことを感じるのだ。
「おれは元気。もう大丈夫だよ」
笑顔を見せて安心させないと。
蒼の様子に関口も微笑した。
「そうか。ならいい」
それだけ?
それだけを言いにわざわざ来たのか?
二人は黙り込んだ。
キッチンから響くお湯の音に誘われて、蒼は席を外した。
彼との距離が離れると少しほっとした。
緊張しているのだろう。
この前は、自分が風邪だったからいろいろ話題はあった。
でも、よく考えたら、話なんか合うわけが無いと思う。
蒼が星音堂に勤務していたから、かろうじて知り合いになったくらいの話だ。
普通に生活していたら接点のない、まったく違う世界に住んでいるのだ。
「あのさ」
考え事をしていると不意に関口の声が響く。
ビックリして顔を上げると、いつの間にか彼はキッチンの入り口に立っていた。
「な、なに!?」
「困っていて。相談にきたんだ」
「は?」
相談って。
自分に解決できるものなのだろうか?
「分かった。聞くけど、ちょっと待って。もう出来るから」
「うん」
いそいそと姿を消す関口。
カップルでもあるまいし。
変なシチュエーションである。
慌てていたらちょっと手元が狂った気もするけど、まあ良しとする。
オリーブオイルとバジルで味付けをして運んでいく。
「はい」
「今日はパスタか」
「なに?」
「いや。麺類が多いよな」
蒼は、むっとして関口の目の前から皿を取り上げる。
「文句があるならやらない」
「そう言うなよ。麺類は好きだ」
「……」
振り回されっぱなしだ。
蒼は、面白くない顔をして皿を置いた。
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