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05 二人4
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昼食時。
蒼は自分で作ったお弁当を開いてにこにこする。
結構、食いしん坊だからこの時間は好きだ。
「いただきます~!」
嬉しそうに食べている彼を見て、吉田は苦笑した。
「最近、弁当じゃん。蒼は、昼ごはんの時は、仕事のときと大違いだよな」
「だって、お弁当って楽しいじゃないですか。吉田さんこそ、生き生きしてますけど?」
「蒼は、なんだか生意気になったな~」
口を尖らせて配達してもらったラーメンを食べている吉田。
星音堂の昼食時間は和やかなものだ。
既婚者はお弁当持参が多い。
水野谷も一緒に自分の机で昼食を摂る。
たまに、尾形や星野は外食に出かけるけど、大概の職員はここで昼食になる。
お茶のお代わりとしようと立ち上がった水野谷を見て、蒼は慌てて駆け寄る。
「おれが煎れます」
「大丈夫だ。自分で出来る」
「いえ。やらせてください」
水野谷の手から湯のみを取り上げ、お茶を注ぐ。
蒼の隣で、その様子をじっと見ていた彼は、ふと爽やかな香を感じ、蒼の肩の辺りを嗅ぐ。
「ふんふん」
「な、なんですか……?」
突然、なに?
蒼は、ビックリして自分の上司を見る。
「なんかお前、いつもと違う匂いがするぞ」
「課長……」
なんで水野谷が自分の匂いを知っているのだ。
わたわたしてしまう。
「おいおい、彼女かよ~!?」
二人のやり取りに尾形が参戦。
「おれは、お前に彼女が出来たなんて言ったら祝い金を出してもいいくらいだ!」
「ええ?」
「蒼に恋人が出来るなんてありえないじゃないですか。尾形さん」
吉田まで酷い言い草だ。
しかし、恋人が出来たわけではない。
事実だから反論のしようもないけど。
からかわれたことは心外だ。
「酷いですよ。二人とも。おれにだっていつかは出来るんですから!」
「じゃあ出来たのか?」
「ぐ!今は違うんですけど……」
やばいなと思う。
関口の匂いが移ったのかも知れない。
いつも一緒にいるから気が付かなかったけど、確実にあの部屋は自分ひとりのものではないのだ。
妙に変な汗をかいて焦っていると、今まで黙っていた星野が声を上げた。
「流行ってんのか?その香り。なんだか、誰かからも同じ香りがした気がするんだよなあ」
星野の攻めが一番痛い。
少しだけ事情を知っているってところもあるからだろうけど。
なんだか星野は、勘違いをしているようで恐い。
星野は、本当にこういう時は意地悪なんだから。
事務室が騒然となっていると、言いだしっぺの水野谷が話を切り上げてくれる。
「まあいいだろう。プライベートまで干渉はしない」
せっかく盛り上がってきたのに。
尾形と吉田は、つまらなそうだった。
「お、昼の連ドラ始まるぞ~」
氏家の言葉に水野谷と高田は嬉しそうにテレビのところにかけていく。
吉田も眠そうにしているし。
蒼もほっとして席に戻る。
と、星野に腕を掴まれた。
「付き合え」
にやりと笑う彼は鬼だ。
蒼は、しょんぼりして星野に連れられて事務室を出た。
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