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06 愛しい人5
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その様子を見てから、戸締りを確認する蒼は、いつまでも口を尖らせて文句を言っている。
そんな彼を見ていると、なんだか笑ってしまった。
あれ?
さっきまでの不安はどこにいったのだろうか?
いつもだったらそんなに簡単に消えてくれないのに。
蒼と連れ立って歩くと変に安心してしまう。
どうしてなのだろうか?
「明日は、休みだ!」
嬉しそうな蒼は背伸びをする。
「明日は、月曜か」
明日は、蒼も休み。
少し気分も違うのだろう。
一緒に暮らし始めてから、初めての休日だ。
「おれも明日は、用事ないしな。一緒に暮らしていてもお互いを尊重しなければならないわけだけど。休日はどう過ごしているんだ?」
にこにこしている蒼は即答する。
「寝るか、本を読むか」
彼の返答に関口は苦笑する。
「は?せっかくの休みなのに寝るのか?」
「当たり前じゃない。おれは疲れているの。働いているんだから。休日くらいゆっくりしないと」
なんだか働き疲れている中年みたいな回答だ。
関口は、爆笑する。
「年寄りか」
「う、うるさい!」
「そんなに馬鹿にすることないのに」と蒼は、怒っている。
「あのね。関口はいっつも生意気だよ。言っときますけどね、おれのほうが年上なんだからね」
「ここまでくれば年は関係ないんじゃないのか?中学生の先輩後輩でもあるまいし」
「そういう態度が生意気って言うんだよ」
蒼に怒られても恐くない。
怒ると言うよりは拗ねていると言うところか。
いくら怒っても笑って取り合わない関口。
なにを言ったって、からかってくるのだから何も言わないほうがいいだろうと判断した蒼は黙り込む。
すると、ふと腕を掴まれた。
「なに?」
「一緒に帰るか」
「え?」
「どうせ帰るところは同じだ」
それはそうだけど。
なんでだろう?
変に気恥ずかしい。
蒼は、顔を赤くして俯く。
「い、いいけど」
「うん」
にっこり笑って関口は蒼の後を着いていった。
事務室に入ると、もう一人の遅番の氏家がいた。
「なんだお前まで来ちゃったの」
彼は、関口を見て笑う。
「氏家さん、戸締り大丈夫でしたよ」
蒼の言葉に、彼は日誌を揃えて消灯する。
「さて、明日は休みだ。帰ろうぜ」
外に出て氏家とは分かれる。
蒼は、関口に連れられて駐車場に向かった。
別段、話すこともないし。
二人は、黙って月明かりの道を歩く。
なにか話さなくちゃいけないと思っているのか?
蒼は、おたおたしている様子だけど助けてやる気はない。
そんな彼が面白いのだから。
苦笑して蒼を横目に見る。
それにしても不思議な男を拾ったものだと思った。
自分の23年間の不安。
もてあましている不安を、一瞬で小さくしてくれる彼がすごいと思ったのだ。
最初は直感で蒼を選んだけど、その直感は正しかったのかも知れない。
ふとそう思った。
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