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20 不穏な出会い4
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しんと静まり返ったステージ。
客席は真っ暗。
明日の照明テストが行われている最中だった。
団員たちは一人もいない。
みんな、明日に備えて帰ってしまったようだった。
静かなステージにはスタッフの声がちらほら響いている。
訂正箇所の打ち合わせのようだ。
明星としては、この海外ツアーフィナーレを盛大に行いたいところだ。
念入りにステージ調整が行われている。
その中を一人の男が、ステージに出てきた。
長身の男。
関口よりも大きいだろう。
少し伸ばしている髪は金色。
大きな瞳はブルーだ。
指揮者の台に立つ男は輝いていた。
そこにいるだけで威圧されるような存在感。
譜面台に楽譜を置き、瞳を閉じてから指揮棒を振り上げる。
なにもないところで一人指揮をする男。
周囲からしたら、なにをしているのだと言うところだが。
彼の耳には届いている。
オーケストラの音が。
重厚に重なり合い、響く音たち。
数小節振ったところで、彼は苦笑して指揮を降ろした。
自分もこの場所に立てる日が来るのだろうか?
早く、ここで自分の音楽を作りたい。
そう思った。
楽譜を閉じ、ステージを降りようと歩みだした瞬間。
ふと第一ヴァイオリン席に一枚の写真を発見した。
それは無造作に置かれ、白い椅子のなかで目立っていた。
彼は首を傾げて写真を拾い上げた。
中にはあまり馴染みの無い衣装を見にまとった男が一人微笑んでいる。
じっと写真を見つめる。
ステージ袖から顔を出したガブリエルは辺りをうかがってから男を見つけて歩み寄った。
『ショルティ?どうした?』
『先生……』
彼は弾かれたように視線を上げ、ガブリエルを見る。
『どうした?今日はもう帰っていいと言っただろう?』
『明日のリハーサルを任されたのです。響きを確認しようと思って』
ガブリエルは苦笑した。
『お前の真面目さには負けるなあ』
彼も帰る準備をしていたのか。
薄いコートを羽織っていた。
『それは?』
ショルティの持つ写真に興味を持つ。
『拾いました。明星のメンバーのだと思うのですが……』
ショルティは写真をガブリエルに差し出した。
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