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23 すれ違い3
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火曜日。
蒼はお土産を携えて、事務室へと出勤した。
「おはようございます」
今日は吉田が早く来ていた。
「吉田さん。早いですね」
「蒼!おはよう。実はさ~、今日までの書類を家でやろうと思っていたら忘れて行っちゃってさ~。朝やっと終わらせたんだ」
「お疲れ様でした」
席で伸びをしている吉田。
いつも爽やかな顔をしているのに、寝不足なのだろう。
少しげっそりしている感じがした。
「大丈夫ですか?吉田さん」
「え?なに」
「なにって。なんだかすごく疲れてますけど?」
「そうか?珍しく早起きしたせいかな~」
蒼の気のせいだろう。
いつもおちゃらけているのが彼のトレードマーク。
この明るさに蒼は入庁してから何度も助けてもらっている。
関口からのお土産を机に置いて、ポットにお湯を入れに立つ。
「あれ?なあにそれ?」
包みを目敏く見つけた吉田。
興味津々で蒼を見ている。
「あ。これ、お土産らしいです」
「らしい?」
蒼の表現は微妙だ。
吉田は首を傾げる。
「ええ。関口から預かってきました。今日の夜に練習には来るんですけど、それではみなさんに渡すのが遅くなってしまうっからって」
へ~と包みを見ている吉田。
そんな彼を取り残して、廊下に出てすぐの給湯室でポットを洗い、新しい水を注ぐ。
普通女性職員がやる仕事を男ばかりの職場でやるのは下っ端だ。
これは下っ端の毎朝の日課。
ポットを抱えて戻ると、吉田は目をまん丸にして何か考え込んでいた。
「吉田さん?」
蒼は苦笑してポットに電源を入れる。
それから、みんなのカップをチェックしていると、不意に吉田が声を上げた。
「ねえ、蒼」
「はい?」
「蒼って、関口とどうしてそんなに仲良くなっちゃったの?」
「え!?」
どっきりした。
なにを急に……。
「えっと。どうしてって……」
「関口って、人見知り激しくてさあ。なかなか馴染んでくれないんだよ。おれがここに来たときなんて全くの無視だったし。今みたいに話をするようになるのに数年はかかったかな?」
「……」
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