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23 すれ違い14
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柴田の家で練習を終えて関口は帰宅する。
時間は18時を回っていた。
夕方だ。
「疲れた~」
ヴァイオリンを置き、関口は横になる。
「まだかなあ……」
今日は病院によって来ると言っていたから、19時は過ぎるだろう。
夕食当番だし。
なにか作り始めないと。
身体を起こしてキッチンに立つ。
今日は一日、練習といいながらも安岐のことを蒼のことを考えていた。
昨日は、結局言えなかったから。
でも一日考えて、きちんと安岐のことを蒼に話すことにしたのだ。
蒼はどう捉えるか分からないけど、隠し事はよくないから、全て話しておきたいのだ。
じゃがいもの皮をむきながら、そんなことを考えていると、携帯が鳴った。
「?」
蒼かもしれない。
包丁といもをその場において、慌てて室内に戻る。
しかし、液晶画面には見慣れない番号が表示されていた。
「誰だ?」
普通だったら知らない番号からの着信は出ないことにしているが、その日は出てみようと言う気になった。
恐る恐る通話ボタンを押す。
「はい?」
返事が無い。
「誰だ?」
『……』
返答はない。
いたずらか?
切ろうかと思ったとき、かすかに自分の名前が聞こえた。
「え?」
『…関口…くん…?』
「……?」
この声は安岐。
「どうした?」
少し様子がおかしい。
『あの、あのね。……あの。どうしよう……。わたし……』
「どうしたんだよ?」
安岐は泣いてしまっているようだ。
困った。
何があったのだろうか。
「おい!今どこだ?」
『わたし、今、家で……』
関口は大きなため息を吐いて立ち上がる。
「お前、家どこだっけ?今から行くから」
蒼には悪いことをしてしまう。
関口はともかく、出かける旨を紙に記載してから出かける。
泣いているやつを無碍にもできないだろう。
携帯で安岐に家の場所を聞き、車で向かう。
ここからは30分程度の市内だ。
彼女も一人暮らしのようだ。
着いた場所は静かな住宅街にあるアパートだった。
「安岐?」
指定された部屋をノックすると、安岐は泣きながら顔を出した。
「安岐?」
「関口くん~!」
安岐は思い切り関口に抱きつく。
「な、なんなんだよ」
「わたし、どうしたいいの~?」
「ともかく、一旦座って話そう」
関口は安岐を伴って彼女の部屋に入ろうとして歩みを止める。
中は女性の部屋らしく、ほんわかした雰囲気だった。
ピンクのものが多い。
蒼の部屋とは違って、余計な飾りやきらきらしたオブジェが見受けられる。
女性の部屋なんて久しぶりだから一瞬、躊躇うが、それどころではないので安岐を連れ中に入った。
「落ち着いて」
「う、うん……」
彼女をソファに座らせて、関口も隣に座った。
「どうした?」
「……。あのね。昨日、関口君と携帯の番号を交換したことが彼氏にばれちゃったの。これは誰だって。わたし、関口君とはなにもなし、ただのお友達だって言ったんだけど。全然信じてもらえなくて。別れるって言うの!どうしよう……」
これは困った。
自分も悪かったのだと思う。
携帯の番号なんて教えなければよかった。
「悪かった。おれも気が付かなくて」
「ううん。わたしが聞いちゃったんだから。自分が悪いんだと思う。でもどうしていいか分からなくなってしまって。頼れる人いないから。関口くんしか……」
「安岐……」
「お願い!側にいて!」
「えっ!?」
弱った。
安岐は関口に抱きついてくる。
彼女を突き放すわけにもいかない。
関口は仕方なく、安岐の背中に手を当てた。
どうも振り切れない自分に嫌気が差す。
心の中では焦りが生まれていた。
蒼はどうしているだろうか?
蒼に対して後ろめたい。
そういう気持ちばかりが湧き出して、関口はめまいがした。
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