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23 すれ違い19
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職場にたどり着く頃には虫の息。
蒼は玄関先の壁に手をついて荒い息を吐いた。
吸入が効かないいなんて。
内服をさぼっていたツケか?
それとも精神的なものなのか?
しばらく、その場でうずくまって休んでから星音堂の中に入る。
屋内はひんやりしていた。
今日は吉田のほうが早いみたいだ。
事務室に顔を出すと、吉田は「遅い!」と言い掛けて目を瞬かせた。
「なんなんだ。ひどい顔だな」
「おはようございます。すみません。遅くなって」
「おはようじゃないよ~。無理しないで休めばよかったのに」
吉田は自分のコーヒーを準備していたが、蒼に駆け寄る。
「すみません。なんだか息苦しくて……。なんだか寝付けなくて」
「季節の変わり目だかね。喘息には辛いな」
「吉田さん。詳しいですね」
「姉がね。喘息持ちだったからさ」
「そうなんですか」
吉田と話していても辛い。
蒼は机に座って俯く。
こうしていると楽だから。
「おいおい。大丈夫か?」
「ええ。平気なんです。もう少しすればよくなりますから。すみません」
吉田は心配そうにしているけど、なにも出来ない。
ただ黙って蒼の様子を伺っていた。
すると、そこに賑やかな尾形が出勤してきた。
「おはよ~!おい!面白い案を思いついたんだ!……?なんだ。蒼?」
彼は席に着こうとして蒼を見つける。
「あ!おれのことは気にしないで下さい。それよりも面白い案っていうのは?」
「ああ。あのなあ。去年は和服だっただろう?だから、今年はなんと意表を突いて『着ぐるみ』だ!」
吉田は、ぽかんとする。
「どこが意表を突いているんですか?」
「あらら?反応薄いな~」
呆れた顔をしてコーヒーを尾形の前におく。
本当だったら蒼の仕事だが、今日は具合が悪いので吉田がやってくれている。
申し訳ないと思った。
「どうして着ぐるみなんて発想が出てくるんですか?おかしいですよ」
「そうかな~。愛らしくて可愛いと思うんだけど」
尾形はネットで取り寄せた着ぐるみのカタログまで持っている。
絶対の自信があるのだろう。
そこに星野と高田、氏家も一緒に出勤してきた。
「なんの話をしてるんだ?」
「いや。尾形さんが『着ぐるみ』にしようって」
吉田が今までの話を要約する。
結局はその一言だ。
「着ぐるみ!?」
「そうですよ!着ぐるみだと顔も見えないし、こんな我々だって愛らしく見えてしまうじゃないですか!」
「……」
「しかし。暑いんじゃないの~?」
氏家は気が乗らないようだ。
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