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24 宮内という男2
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「ありゃ、中の様子を探っていたね」
星野はさっそく、事務所で今朝のことを話す。
「怪しいですね~」
吉田も興味津々だ。
書類のコピーをして席につく。
その様子を見つめながら星野はコーヒーを口にした。
隣の席の蒼は使用が終わった練習室の点検に行くと言っていたので今はいない。
「星野さんのこれとか?」
尾形は、にやにやして小指を立てる。
「尾形。男だぞ?女だったらありうるかも知れないけどな」
「またまた。最近ちっとも浮いた話のない星野が~?」
星野の隣の高田はげらげら笑った。
水野谷が席を立つとすぐこれだ。
事務室の中は賑やかだった。
もともと事務室に用事があってくる来客は、限られている。
来客の理由は大きく分けて二つ。
一つは練習室やホールを借りたいと言うもの。
そして、もう一つは演奏会のチケットを購入したいと言うものだ。
こんな調子だから来客数はゼロの日もあるくらいだ。
練習室の押さえは、最近ではネットや電話でも可能なので、常連組はそちらを利用することが多い。
わざわざ足を運んでくるのは、初めての人や大ホールの使用許可をもらいに来る人くらいのものだった。
だから、来客を気にしておとなしくしている必要もないのだ。
午前中は、まあまあ一生懸命仕事をしていても、午後になると眠気覚ましとばかりにこうして無駄話が多くなる。
「ひどいな~。高田さん」
高田の言葉に星野は膨れた。
「本当のことだろう?いい年なんだから遊んでばかりいないで落ち着けよ」
「はあ~」
「しかし、よっぽど星音堂に興味があったんだろうなあ。その男」
パソコンから視線をあげた氏家。
「そうですよね~。なんなんですかね?正々堂々と入ってくればいいのに」
氏家の言葉に吉田も同意する。
「お目当ての人がいるとか?」
「え?」
そこへ水野谷が帰ってきた。
「おれかな?」
「は~ッ!?」
一同はぽかんとなる。
「ありゃ?」
「ぷ~!課長、最初から聞いていたんですか~?」
吉田は大きな声で笑った。
「い、いや~?なんの話だ?」
彼は本庁で会議があって出かけていた。
やっと帰ってきたと思ったら面白そうな話をしていたのでついつい混ざってはみたものの……。
「な、なんの話だ!」
「あははは~!」
「か、課長!最高です!」
「おかえりなさい」
大爆笑の事務室。
あの男のお目当てが水野谷だったら……。
一同は想像して再び爆笑の渦だ。
「なにかあったんですか?」
見回りから帰って来た蒼は、鍵をしまいながら首を傾げる。
「い、言うなよ!」
なんだか意味は分かっていないが、水野谷は蒼にまで波及するのを恐れて星野を遮る。
「いや~それが。課長がさ~」
「何です?」
「星野!」
ものすごい騒ぎになろうとしていた時、珍しい来客があった。
「あの~」
長身の男である。
一番入り口に近いところに立っていた蒼は弾かれたように振り替える。
お客さんなんて久しぶりで緊張してしまう。
「は、はい!」
「ここでリサイタルをすると幾らくらい掛かるのか教えていただけますか?」
「はい!どうぞ。こちらでご説明いたします!」
蒼は男を受付の椅子に案内する。
「少々お待ちください」
焦って無駄な動きが多いながらもコーヒーを用意して男の前に座る。
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