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28 新星現る14
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―――いい音楽はね。興奮する
関口がいつか言っていた。
蒼は群集の歓声で我に返った。
「ブラボー!」
「ブラボー!」
あちらこちらから割れんばかりの拍手と歓声。
ホール内は総立ちであった。
それを上の席から見ていた蒼は、身体の芯を揺さぶられる気がした。
「大丈夫?」
隣の圭一郎に声を掛けられてビックリする。
「え!?か、感動しました……」
そう呟いてステージに視線を送る。
その隣にいた圭一郎は苦笑する。
「しかし無茶苦茶だねぇ。若いが故の成せる技かな」
往年の巨匠からしたらそういう評価なのだろうけど。
蒼は、ぼんやりしていた。
「でも、なんだか力強くて、太陽に照らされているみたいな……」
「そうだね」
加賀と握手し、胸を張ってホールを見渡しているショル。
堂々とした風格はこの時にこのホールを支配した男の威厳からくるものなのだろうか……?
ぼんやりしてしまっている蒼の横顔に圭一郎は苦笑した。
「新星が降り立ったな」
時代は変わっていく。
自分たちの時代は過ぎてしまったのではないか?
永遠などは存在しない。
物事は映り行くものだ。
現にこうして新しい男が誕生したのだ。
圭一郎からしたら、その場所に立っているのが自分の息子ではないことが歯がゆく思われた。
ステージに立つ者だけが味わえる特権。
早く自分の息子にも、味わってもらいたいものだと思う。
隣でショルティの音楽に飲み込まれ、茫然自失になっている蒼を見つめると、おかしくなってしまう。
これが関口だったら、どんなに素敵な夜になったことだろう。
「圭。お前も早く飛んで来い。この舞台まで……」
そう呟いて、圭一郎は瞳を閉じた。
拍手の余韻は留まることを知らなかった。
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