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28 新星現る17
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『ショルも飲んだら?美味しいよ』
『そうだね。うん』
彼はコップを取り上げて、日本酒に口をつけた。
もう帰ることなんて、意識のどこかに行ってしまったみたいだった。
ただ、目の前にあるお酒と、素敵な音楽について話をしていると、自分が置かれている状況がなんなのかさえ分からなくなっていた。
いつもの蒼だったら、こんなものではへこたれはしないのだが……。
今日は朝からいろいろあって疲れていたらしい。
コップを握る手は止まり、いつの間にかうつらうつらしてしまう。
『蒼?大丈夫?』
彼の様子を見守っていたショルティは、さすがにぼんやりしてきた蒼に声をかける。
『なんだろう?眠い~……』
『疲れたんじゃないの?』
『わかんない……』
ショルティが腕を伸ばすと、椅子の上に収まっていた蒼は彼の肩に頭をくっつけた。
距離が縮まる。
蒼の熱っぽい吐息を感じる。
『う~……』
『今日は帰れないよ。無理だよ。泊まっていきな』
『ん~……』
ショルティの腕に手をかけ、瞳を閉じる。
気分がいい。
このまま眠ってしまいたい。
『眠い……』
『いいよ。おやすみ。蒼』
ショルティの腕の中で、軽く寝息を立てはじめる彼を見て、思わず笑ってしまった。
『本当に無防備なんだから』
彼は幸せそうに笑っていた。
どんな夢をみているのだろうか?
膝の後ろに腕を回し、抱えあげるとそのまま側のベッドに彼を移す。
『邪魔だな』
銀色の帯を解くと、蒼は気持ちがよさそうに寝返りを打った。
「う~ん……」
ベッドサイドに座り、そっと蒼を見つめる。
『ねえ。蒼』
名前を呼んでみるけど、彼は起きる気配を見せない。
『蒼』
そっと手を伸ばし、彼の頬に触れてみる。
さっきまであんなに高潮していた頬は冷たい。
お酒のせいか、興奮のせいか。
少し汗ばんでいる額に手を移す。
写真では短かった前髪も伸びている。
髪をかき上げて彼の顔をまじまじと見つめてみた。
日本人、日本人って言ってはいるが、可愛いのは蒼だからだと思う。
来日して日本人をいっぱいみた。
でも、蒼みたいな子はいない。
どうして出逢ったのだろう?
彼はもう関口圭という男のものなのに……。
そっと顔を近づけて唇を重ねる。
酒臭い。
それがますます可愛いと思った。
軽くキスをしても蒼は起きる気配がない。
ショルティは体重を移動し、彼の上に覆いかぶさる。
『ごめん。蒼』
そう呟いてから更に深くキスを繰り返す。
「ん……?」
蒼は朦朧としていた。
たどたどしいけど、ショルのキスに答えようと口を開く。
それを受けて舌を吸い、口内に入り込む。
「うん……ふ……っ」
ショルティの腕を握る手に力が入る。
ふと唇が離れた瞬間。
蒼の口からは別の男の名前が飛び出した。
「せきぐち……」
動きを止めて蒼を見詰める。
うっすら瞳を開けて、蒼はショルを見る。
しかし、彼の瞳にショルは写らない。
「関口……。ごめんね……。黙ってきちゃって」
『関口って、圭のこと……?』
蒼は再び、ショルとキスをする。
彼のことを関口だと思っているらしい。
「ごめんね。もうしないからね。ごめんなさい」
半分泣いている蒼。
ショルは苦笑した。
『蒼。本当に好きなんだね。彼のこと』
細い体をぎゅっと抱きしめてショルは瞳を閉じた。
これ以上は自分も傷付く。
『全くきみと言う人は』
もうやる気も失せた。
ショルティの温もりにほっとしているか。
彼は再び寝息を立てた。
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