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30 関口邸6
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朝。
眠い目を擦りながら、居間に顔を出す関口。
蒼は「初めて関口の家にきたんだもん。ちゃんとしなくちゃ」と寝癖いっぱいの頭をなおしてから、出て行くと言っていた。
そんなに気を使うことはないのに。
部屋に入ると、かおりがエプロンをして出てきた。
「おはよう。圭」
「おはよう」
ダイニングに行き、椅子に座る。
圭一郎は新聞を読んでいた。
「蒼は?」
普通だったら答えたくないところだけど、昨日は随分お世話になったのだ。
素直に答える。
「もうくるよ。ちょっと用意に手間取っててね」
目の前に置かれた味噌汁。
ふと高校時代を思い出し、懐かしい気持ちから口をつけた。
すると、ご飯を運んできたかおりは笑顔で声を上げた。
「昨日はずいぶん激しかったわね」
味噌汁を飲んでいた関口は吹き出した。
「ぶ~ッ!!」
視線を上げると、2人がにやにやして彼を見ている。
「本当に若いっていいわね~。お母さんも久しぶりに若い頃を思い出しちゃったわよ」
「蒼は可愛いからね」
言葉もない。
立ち聞きなんて。
さすがに、ここまで悪趣味な両親だとは思ってもみなかった。
甘かった。
呆然としていると、蒼が入ってきた。
彼はすっかり呼吸の調子がいいらしい。
目をこすりながら眠そうだ。
「おはようございます。昨日は、お世話になりました」
彼はぺこっと頭を下げた。
「あ、蒼ちゃん。大変だったわね。昨日は、いろいろと疲れたでしょう?」
「ご飯でもたべて元気を出すといいよ」
「そうそう。圭のせいで、ゆっくりできなかったでしょうからね」
「へ?」
目を丸くしている蒼。
関口は大きな声を出す。
「わ~っ!わ~っ!!」
両親の話を聞かせない作戦だ。
「え?なに?関口?」
ごはんを食べようとして、席についたばかりの蒼の肩を掴み引き寄せる。
「蒼っ!帰るぞ!!」
「え?ごはんは~?」
箸を握ったままの格好で、名残惜しそうに食卓を見つめる蒼。
冗談じゃない。
このまま一緒にいたのでは、なにを言われるかたまったものではない。
昨晩のことを関口の両親たちが知っているなんて、蒼が知ったら卒倒ものだ。
喘息の発作どころじゃないだろう。
「あらら。もう帰っちゃうの~?」
「ごはんくらい食べて行きなさい」
余計なお世話だ。
「いいから!!蒼!!帰るぞ!!」
関口に急かされて、そのまま玄関を飛び出し、車に押し込められた。
「ちょっと、関口。せっかくお母さんが朝食を作ってくれたのに……」
「朝飯なら途中でいくらでも食わしてやるから」
「だけど……」
「いいからっ!」
こんなに取り乱した関口は初めて。
蒼は首を傾げて、遠ざかる関口家を見上げた。
いつかまた来られる日が来るのだろうか?
せっかく来たのだから、もう少し中を探検したかった。
それに。
彼の妹の朱里のことも気になる。
彼女は大丈夫だろうか?
様々な思いが交錯する。
助手席に身体を預け、外を見る。
帰れる。
あのアパートに。
懐かしい我が家を思い、ほっと息を吐く蒼を見て、関口もほっとした。
このままいられたらいいのに。
ずっと側で。
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