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41 冬のジェラシー2
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21時。
戸締りをして事務室のところに戻ると、関口がいた。
彼は文化祭の後、1月に控えている市民オケの定期演奏会でソロをやることになっているので忙しいのだ。
ソロの話は桜にも通してあるので市民オケを優先しているものの、相変わらず帰宅は遅いままの日々だ。
だから、市民オケの日はこうして一緒に帰って少しでも二人の時間を過ごそうというわけだが……。
今日はそうはいかない。
彼女との約束が出来てしまったから。
「蒼、帰る?」
「関口」
もごもごしてから話を切り出す。
「あのさ。今日、ちょっと用事が入っちゃって」
「なに?」
「いやさ。ちょっと昔の友達がね。久しぶりにメールくれてさ。食事でもどうかなって」
「そうなの?」
関口はけろっとしている。
そして、にっこり笑う。
「いいじゃん。蒼。ちっとも友達と出かけたりしないんだから。たまには食事しに行ってきなよ」
「関口」
心が痛む。
「大丈夫か?顔色が悪いみたい」
「だ、大丈夫……でもないんだけど」
「どうしたんだ?行きたくないのか?だったら行かなくても……」
でも。
そうも行かないのだ。
わ~!
心の中の葛藤。
関口もこんな気持ちだったのではないだろうか?
ふとそう思う。
あのときは自分も辛い思いをしたから、関口には「他の人には優しくしないでね」なんて言ってしまったが……。
関口もかなり辛かったんじゃないか?
今更、理解した。
今、自分はあのときの関口と二の舞になっているのだ。
こんなのはいけない。
蒼は覚悟を決める。
「分かった!」
「なに?なに?急に?」
「今日は行かない!ちょっと断ってくるから関口、待っていて」
「いいけど……」
関口は頷く。
「いいのか?」
「うん。大丈夫。今日は行きたくないんだもの。車で待っていて!すぐに行くからね」
蒼は関口の背中を押して荷物を持つ。
「待っていてね!」
「うん」
関口が先に玄関から出るのを見送ってから、蒼は気合を入れて外に出た。
時計台の下には約束をした女性が立っていた。
一体何者なのだろうか。
蒼は「よし!」と自分に言い聞かせてから声をかける。
「あの!」
「よかった!来てくれないのかと思った」
「あの。本当にすみません!おれ、今日はちょっと無理……ってか、これからも無理で」
「なんで……?やっぱり関口くんと?」
「関口は関係ない」
首を横に振って女性を見る。
「関口は関係ないんです。だけど、こういうことは本当に困ります」
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