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42 仕事納め5
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「なにやってんだ!?お前ら……」
「あ~あ」
「はっ!すみません……おれ……」
蒼は、はっと我に返って二人を見る。
「すみません」
ちょっぴりめげていたところに、追い討ちをかけるようなことばっかり言うんだから。
蒼だって怒りたくもなるだろう。
しかし、バケツの水をかけてしまうなんて……とんでもないことをした!と思った。
年末にバツが悪い。
怒られる事を覚悟した蒼だったが……。
星野はお腹を抱えて笑っていた。
「ぐははは!吉田の顔!変っ!」
「な、ひどッ!」
ぐしゃぐしゃになって情けない顔の吉田といったらない。
氏家たちもつられて笑った。
犯人である蒼もつい笑ってしまう。
「蒼まで笑うな、蒼まで」
吉田はふんと顔を背けた。
「って言うか。お前たちはなにしているのだ。まったく。さっさと片付けて終わりにするぞ」
騒ぎを聞きつけてやってきた高田と水野谷も吉田を見て笑う。
「なんだ、その格好は」
「情けないなあ」
「笑わないでください!ひどいよ~!ひどい仕事納めだよ~~」
泣き出す吉田をなぐさめながら一同は事務室に戻った。
星野と吉田はシャワーを浴びて戻ってきた。
事務室は綺麗に片付いている。
時間はすでに定時になっていた。
今日は大ホールや夜の予定もないから、みんなで終了することができる。
事務室に集合した一同は水野谷をの挨拶に耳を傾けた。
「今日はご苦労様。そして、今年一年ご苦労様。今年は文化祭などでも新しい試みも成功し、君たちの協力に大変感謝している。おれは給料を上げたりできる立場じゃないけど、もし融通が利くならお手当てをあげたいくらいの話だ」
一同は苦笑する。
「まあ、ボーナスもらっていると思うからそれで我慢してね」
「結局それですか!」
吉田の突っ込みに爆笑が起きる。
「そういうことだ。まあ、みんなそれぞれ色々あった年だったと思う。仕事もプライベートも。それぞれ思うところはあると思うが、少ない冬休みで疲れを癒し、また来年も頑張ってもらいたいと思う。それでは、よい余暇を過ごしてくれ」
「は~い」
どやどや解散。
休みはみんな色々予定が目白押しみたいだ。
家庭を持っている高田より上の職員は実家に帰ったり、家族旅行があったり。
吉田は友達とボードに行きまくると話していたし。
星野もそんなに予定のことは言わないけど、デートとかあるみたいな感じだった。
いつもだったら一人で予定もない蒼。
実家にだって行き難くて一人で年越しをすることが多かった。
だけど。
今年は違うのだ。
今日、自宅に帰ったら関口がいる。
桜のお店に行ってのんびりして。
明日は待望の温泉旅行だ。
クリスマスにいけなかった分の。
温泉で年越しなんて生まれて初めて。
ワクワクする。
元日にはその足で蒼の実家に行って。
そして後はのんびりできる。
冬休み前の子どもの気持ちだ。
こんな気持ち、何年ぶりだろう。
嬉しい。
蒼はみんなが出たことを確認して最後に鍵をしめた。
じっと上を見上げると、すでに暗くなっている空に白い大きな建物がたたずんでいた。
「ありがとう。関口と逢わせてくれて」
ぼそっと呟いてから帰途についた。
今年一年、ありがとう。
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