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51.a secret8
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「ってか!なんで知っているんですか?」
「見ていた」
「はあ!?見ていたなら言ってくださいよ!」
「そういうお前が愉快で、とても声をかける気にならなかった」
「ひどっ!」
ひどい話だ。
連絡が来たら逢ってやってもいい?
試したのか?
自分がいつ泣きついてくるのか待っていたってこと?
「安齋さんの冷血漢!」
「冷血漢って死語だろう?」
「そこ、突っ込みどころじゃないですっ!」
この2年間、一人でもやもやして、落ち込んだり、悩んだりしていた自分が馬鹿みたい。
それを楽しみにしていた安齋なんて嫌い!
おろおろした気持ちは怒りに変っていた。
「も、もう知らない!安齋さんなんて嫌い!!」
「そうか?別れるのか?2年も待って」
「な、なに?」
「お前の面倒を見る男なんて、この世の中でおれくらいだぞ?こんないい男が2年もお前のことを待っていてやったのだ。いいのか?手放して」
「自分でいい男とか言っているんじゃ話になりませんよ!」
ぶ~っと不満をもらすけど、なんだかほっとした。
吉田が一番恐れていたことはそれ。
安齋の心変わりだったから。
彼は自分の気持ちを容易に表に出す男ではない。
だから、再会したときもそこが恐くて自信がなかった。
でも今ならはっきり分かる。
騙されていたことには腹立たしいが、この4年間、彼の自分に対する興味は尽きていなかったってこと。
それから大切に思ってくれているってこと。
それがはっきりしたから、ずっと重く圧し掛かっていた不安が軽くなった気がした。
「おれはいい男だ」と一人で言い切って威張っている安齋を見上げる。
「安齋さん」
「なんだ?」
「また、おれのこと、拾ってくれるんですか?」
腕に治まったまま視線は絡み合う。
瞳を細めて、彼は笑った。
「当たり前だ。拾うもなにも、お前はおれのものなのだから。ただちょっと、自由にさせてやっただけのことだ。もうそんな自由は利かないからな」
照れ隠しなのか。
ぎゅっと抱き締められて安齋の顔は見えない。
「安齋さん?」
ふっと大きな手が頬に当てられたかと思うと唇を持っていかれた。
2年ぶりのキス。
安齋の味。
ずっと求めてきた。
絡み合う舌の感覚に瞳を閉じて息を吐く。
「ふ……ッ、は、んん」
2年間。
いろいろな葛藤に押しつぶされそうだったけど、なにもかも忘れさせてくれるキスされた。
思わず彼の背中に回した手に力が入る。
それを感じたのか。
安齋は意地悪な笑みを浮かべた。
「相変わらずキスが好きか?」
「え!?そ、そりゃ、そう……」
顔を赤くして俯く。
次にどんな意地悪な言葉を言われるのか?
予感がして、受け止める準備をした。
しかし、彼は笑っているばかり。
「な、なにも言わないんですか?」
「なにか言ってもらいたいのか?」
「……別に」
恥ずかしくてもごもごしていると、安齋は顔を上げる。
「そうだな……」
次に言う言葉を捜しているようだ。
「……」
「そうだな。おれもお前とのキスは気に入っている。それ以上もな」
真顔で言われても困る台詞だ。
吉田は更に顔を赤くして安齋を見上げた。
「ななな!なに言っているんです??」
「久しぶりに家に来ればいい」
「ちょ、ちょっと!安齋さん!?」
半分引っ張られるように連行されて安齋の車に押し込められた。
「ちょっと!誘拐!拉致監禁だ!!」
「うるさい男だな。少し言葉を覚えたからって手当たり次第に使えばいいものではないのだぞ?」
「それはそう……って!人を子ども扱いしないでください。おれだって普通に日本語話せます!」
「なんだか2年経ったらよく喋る。どうせあの蒼とかってガキとつるんで仲良しごっこしているのだろう?」
「蒼はおれの可愛い後輩なんですから。そんなこと言わないでくださいよ!」
吉田の意見になんて耳を貸さない彼はさっさと車を発進させた。
一難去ってまた一難。
安齋との付き合いに平穏無事と言う言葉は程遠いってことを実感した吉田だった。
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