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52.ATTO TERZO4
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ファイナル進出の知らせは、直接関口の元にやってきた。
しかも。
持ってきたのはセコネフ。
『なんでお前が来るんだって!』
関口はむっとしてセコネフを見つめる。
『まあまあ。そう怒らないて~♪ついでにファイナル進出についてインタビューさせてくださいってば』
結局目的はそれだろう。
『さっさと帰れってば!』
『そう冷たい態度をとらなくてもいいじゃないですか~!未来のマエストロ』
『馬鹿にしてんのか~!』
一発殴ってやろうかと思う。
しかし、桜が間に入った。
『まあまあ、二人とも。いいじゃないの。セコネフは勝手に書いとけばいいって』
『なに!桜さん??』
『もうここまできたら盛り上がるだけ盛り上がっとけばいい。これで駄目でも、みんなの心にあんたの存在は刻み込まれるじゃない。大物になるにはそれくらの余裕がないと駄目よ』
『そうそう』
桜の言葉にちゃっかり同意しているセコネフが憎たらしい。
本当に。
マスコミって言うのはむかつく存在だ。
日本で見ていた有名人の気持ちが分かる。
『分かった。分かった。じゃあ、勝手に書けばいい。おれはあの関口圭一郎とかおりの息子だし。ショルとは因縁の対決中だって』
『おお!君の口から直接聞くと嬉しいね。で、ショルとはどういう因縁が?』
『それはプライベートだ。今回はファイナルに残るって約束をしただけだからね。これで約束は果たしたつもりだ』
『その約束はいつ頃したの?』
『……ショルが日本でデビューした時だ』
『そんな以前から交流があったんだね。それで、その時にこのコンクール出場を決めたんだね』
『……そういうことだ』
ふむふむとメモを取りながら彼は次々に質問を投げかけてくる。
『このコンクールで優勝したら、何をしたい?』
『は?そんなことは分からないって。おれは音楽がやれればいいし。それがどこだって同じことだ』
『おお!すでに大物の発言だね』
『……』
関口がインタビューに応じてくれるなんて思ってなかったんだろう。
セコネフは本当に嬉しそうだ。
そんな彼を見ていたら、なんだか苦笑してしまった。
頑なに拒むこともなかったかもしれない。
だって、話をしていて気付いた。
ファイナルに残る。
それが条件だったはずだ。
ショルはもう蒼には手を出さないはずだ。
約束したもの。
これでよかったのだ。
なんだか気が抜けた。
ここまできたら楽しむしかない。
そう思えた。
初めて、このコンクールが楽しいと思えたのだ。
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