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56.迷子の子3
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平日の午前中に訪問してくる友人はいないはずだ。
桃や宮内とも先日、十分に話しをしたはずだし。
星野たちだって自宅を訪問し合うような仲でもない。
蒼の家族だって今頃はみんな仕事だろう。
宅急便か?
ほんの一瞬で判断をして圭は玄関に向かった。
帰国したばかりでばたばたしていたせいで、室内は乱雑になっている。
蒼の本なども便乗して散らばっているから避けるのに大変だ。
少し苦戦しながら玄関にたどり着く。
「はい?」
扉を開けると、そこには見知った顔。
「あれ?」
「よかった!ここでしたかっ!探すのに苦労しましたよ!」
立っていたのは高塚。
そう。
コンクールの時にドイツで知り合った雑誌編集者だ。
彼は晴れ晴れした顔をしている。
カーテンも締め切りの暗いところにいた圭からしたら、すごく眩しく見えた。
彼はあの時と同じ。
スーツにリュックを背負って立っている。
いつもこのいでたちだったのか。
思わず笑ってしまうが、どうしてここに来たのか皆目検討が着かない。
「げっ、どこで調べたんだよ?」
「どこでって。マエストロに教えてもらって」
彼が出したのは、汚い字で書かれた圭の住所のメモ。
「あいつ……」
なんで余計なことばっかりしているのか。
あの父親は……。
そう思う。
「あの、取材なら今日はちょっと。助けてもらった恩はあるけど……」
「いえいえ。今日は取材って言うわけでもなくて……」
「は?じゃあなに?」
玄関先ではなにか?
だけど、中では蒼が寝ているし。
自分はこんな格好だし。
どうしよう?
あっちこっち視線を巡らせていると、蒼が顔を出した。
「あれ!高塚さん?」
「あれ!蒼くん」
二人は顔を見合わせた。
「えっと。あはは」
「うふふ」
高塚は一瞬で理解をしたのか、笑顔でごまかす。
「お邪魔、だよね?」
「いえいえ。どうぞ」
圭が悩んでいたことなのに。
蒼は勝手に彼を自宅に上げた。
「は~」
結局これか。
カーテンを開けると室内は明るくなる。
狭い部屋だけど、彼はそんなに大柄ではないからよかった。
ここに宮内と桃が来ると、大変なことになるくらいだから。
居心地の悪そうに座っている彼をベッドに腰を下ろして見下ろす。
その間に蒼が散らばった荷物をせっせとかき集めて、即席で整理をする。
「で、何の用?」
上から見下ろすと、高塚は正座をしたまま話出す。
「いやあ。実は。マエストロに言われてここまでやってきたんですよ」
「はあ?」
圭と蒼は顔を見合わせた。
「どういうこと?」
「なんであいつが?ってか、どういうことなんだ?」
高塚はおろおろして圭を見上げた。
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