アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
58.雨の日に来たもの5
-
「ん?」
猫。
ぽてぽて歩いてきてあぐらをかいている足に上りたいらしい。
ちょんちょんともこもこしている手でおれの膝のあたりをつつく。
「おいおい。邪魔するなよ?」
「ニャン」
一声鳴いてから猫はおれのズボンにツメを立てた。
「いて!」
引っ掛けて上る作戦らしい。
やっとの思いで膝の辺りから上ってきた猫は、前につんのめり、一回転をしておれの足の上に収まった。
自分がごろんと前転したことなんて理解出来てないのか。
猫は目をぱちぱちさせていたが、丸くなって毛づくろいをはじめる。
寝に入る態勢らしい。
「寝る。食べる。転ぶ。本当に蒼だな」
そうだな。
蒼って名前はどうかな?
でも紛らわしいな。
蒼が二人いたのではどっちが呼ばれたのか分からないだろう。
どうしよう。
名前。
まあ、猫なら猫でもいいんだろうけど。
真っ黒だし。
なんかいいネーミングが浮かびそうなんだけどな。
う~ん。
悩む。
悩む。
悩む。
ああッ!
もう!
楽譜は閉じた。
集中なんてできやしない。
ばさっと閉じて、側の机に放り投げる。
それから自分の足の上に丸まって眠っている猫を見た。
「お前の名前、どうしようか?」
そっと撫でると、気持ちよさそうに喉を鳴らす。
「誰かに上げるなんてもったいないな」
じっと見つめていると、ふと気付く。
こいつ。
どうやっておしっこするんだ?
なんだか何も分からないってことに気が付いた。
おれは慌ててパソコンを開き、子猫の育て方を検索する。
すると、いろいろ改善すべき点がたくさんあった。
生後1ヶ月にも満たないおチビの場合、ミルクは哺乳瓶のほうがいいらしい。
しかも、ミルクを上げる時間もこんなのんびりじゃなくて、人間の子みたいに4時間おき。
おしっこも濡れたガーゼでお尻を刺激して出してあげないといけないらしい。
それに、まだ本当だったらお母さんに寄り添っている時期だから保温もしっかりしないといけないようだ。
「げ。お前、おしっこ出てないよね?」
確かに。
お腹はパンパンだ。
慌ててティッシュを濡らし、そっと身体を持ち上げてお尻を刺激する。
猫はじたばた手足を動かしていたが、その内、排尿が始まると気持ちよさそうに瞳を閉じた。
「そっか~。ごめんな。お前、おしっこしたかったよな」
長いそれを終えると、またじたばた始まる。
「なんだよ~。もっとミルク上げなくちゃいけないし。それに人間の牛乳じゃダメなのか。足りないもがたくさんあるじゃん」
おれは慌てて猫を抱えて外に出る。
哺乳瓶。
子猫用ミルク。
ガーゼ。
他になにか必要なのだろうか?
生後1ヶ月くらいだと離乳食を始めてもいいって書いてあった。
そういうのも売っているのかな?
初めてだから分かんない。
猫を膝に乗せて車を走らせる。
って言うかペットショップでどこにあるんだ?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
430 / 869