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60.おねだり1
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期待していないと言ったら嘘になる。
だけど、自分からおねだりしたことがないから、どうしたらいいのか分からない。
蒼はそっとキッチンからベッドの上に寝転がっている圭を見つめる。
彼は明日の準備で楽譜を眺めているところだった。
「明日はどんな予定になっているの?」
ため息を吐きながら自分も部屋に戻る。
彼は「ん~」と唸ってから顔を上げた。
「明日は東京に行く。お昼から小学校の演奏会に招待されているからね」
そっか……。
そう呟く。
「小学校で管弦楽クラブがあるらしくてね。協奏曲をやってくれるそうだ。たくましいね。小学生」
「すごいね!」
笑顔を作ってはみるものの、気分は沈み込んでいる。
蒼がベッドに乗ると、今度は彼が起き上がった。
「どれ。風呂に入ってくる」
「あ、うん」
「蒼は寝ていていいよ。ちょっと曲の構想を練るから。長くなる」
「え!うん」
最近。
圭は忙しい。
仕事が忙しくなると音楽のことで頭がいっぱいになる時間も延びる。
こうして一緒にいても心はここにあらず。
「は~」
ため息を吐いて布団に入り込む。
足元で丸まっていた、けだもが蒼が帰って来たのに気が付いて側に寄ってきた。
そして、蒼の背中にお尻をくっつけて丸まりなおした。
「けだもだけだよ。おれのことかまってくれるの……」
しょんぼりして蒼は瞳を閉じた。
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