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61.関口家騒動11
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蒼の言葉に彼女は息を呑む。
蒼は「任せて」と合図をし、そっと携帯の通話ボタンを押した。
『蒼?ごめん。メール読んだ?』
そういえば返事をしていなかったんだっけ。
「うん。ごめん。ちょっと忙しかったから」
『忙しい?』
「うん。仕事が」
そっか……と圭の声が聞こえる。
なんだか疲れているみたいだった。
『実はさ。少し問題が起きて……』
来た。
蒼は苦笑する。
「問題って朱里ちゃんのこと?」
『なんで知っているんだよ?』
「え?だって、ここにいるんだもん」
『は!?』
絶句。
そういったところだろう。
関口からの言葉はない。
蒼はおかしそうに朱里に携帯を渡す。
「お兄ちゃん」
彼女の声に圭は更に驚く。
『は!?なんでお前がそこにいるんだよ?』
「なんだっていいでしょう?」
『よくないだろうが!』
安心したら疲れが一気に出たのかも知れない。
気の抜けたような声だった。
「ごめん。心配かけて」
ふっと洩れる彼女の言葉。
圭は黙り込んだ。
「ごめんね。お兄ちゃん」
『な、なんだよ。無事ならいいんだって。事情はよく分からないけど、蒼と一緒なら安心だ』
「すごい信頼ぶりね」
なんの話をしているのか蒼には皆目見当もつかない。
『それはそうだろう……』
「はいはい。分かりました」
朱里は苦笑して蒼に携帯を渡す。
「圭?今晩はこっちで預かるから。明日帰ってきて」
『だけど!お前らだけにはしておけないだろう?』
「なに心配してんの?なにもないよ」
『そうじゃなくて……』
そこでがざがざ雑音が混じる。
そして大きな声が聞こえた。
『蒼か!?圭一郎だ』
「お父さん……」
『今からそっちに向かうから!夜中になってしまうがそれまで朱里を頼む』
「あ、あの!」
蒼の言葉なんか聞かずにさっさと携帯は途切れた。
朱里は心配そうに蒼を見る。
「お父さん?」
「これから迎えに来るって」
「え?」
「すごく心配していたみたい。大丈夫。安心して」
彼女は小さく頷いて俯いていた。
こんな騒動になっているなんて知る由もないけだもはいつまでも寝息を立てていた。
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