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66.スコア4
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休み明けの事務室。
仕事したくないモードが漂っている。
こういうときは仕事をしているふりに限る。
だけど、最初に投げ出すのは星野だ。
「めんどくせ~!やめ、やめ」
彼の声に氏家が苦笑する。
「おいおい。課長が出張だからって、そんなあからさまに仕事を放棄するなよ~」
「だって~」
「でも週明けって本当にやる気が出ませんよね」
吉田も同感。
そして蒼も。
他の職員もそうなのだろう。
高田も尾形も三浦も。
みんな手を休めて話し込んだ。
「そういえば今度、関口が凱旋リサイタルするんだって?」
星野の言葉に一同は興味津々。
「すげえ」
「本当に有名人なんですね」
「関口って誰っすか?」
最後の問いに一同は三浦を注視する。
そうだった。
「そっか。お前はあんまり関口の存在を知らないんだもんな」
「存在ってなんっすか」
星野は当たり障りないように説明をする。
「関口って言うのは、頭角を現してきている新進気鋭のヴァイオリニストなんだ。そいつが、小学校の頃から星音堂に出入りしていたからさ。みんな知っているって訳」
「そうなんすか!すっげ~!!」
すごいのか?
一同は首を傾げる。
確かに。
昔からここに出入りしているから気が付かないけど、関口はすごいヤツなのだ。
「へ~!」
三浦はいつまでも感嘆の声を上げる。
「その関口って人が今度リサイタルを?」
「そうそう。しかもここでやるそうだ」
「わ~!じゃサインとかもらえるかな?」
「サイン?」
蒼は思わず吹き出した。
「なんで笑うんっすか!蒼ちゃん」
「ご、ごめん」
圭にサインなんてもらってもどうしようもないだろう、と思う。
「なるほど!」
笑いを堪えていると、星野が手を鳴らす。
「なんです?」
「今やあいつも有名人ってことはだ。あいつに関連するグッズをネットとかに出したら高く売れるんじゃねーか?」
「それ!ありえますね!!」
吉田も話に乗る。
「なな?」
「蒼!お前さ。あいつがいらなそうな楽譜とかなんかもらって来いよ」
「え、おれ?」
そんなことはやめなさいと嗜める氏家を他所に、星野は話を進める。
「いいね~。いいじゃん。蒼にならなんかくれるよ」
「そ、そんな……」
「え~!蒼ちゃん、仲良しなんっすか?」
三浦につつかれ、星野につつかれ、蒼は大弱りだ。
「困ります」
「いいじゃねーか。試しだよ。試し」
星野は蒼のネクタイを握って引っ張る。
「わわ!」
「いいな。必ず確保してこいよ!」
「……」
蒼には返す言葉もない。
すると首根っこを掴まれて小声で囁く。
「お前と関口のことを三浦にもバラすぞ」
「そ、それは」
「さすがに気が引けるだろう?」
「星野さん……」
「明日な!」
やっぱり悪魔だ。
星野は意地悪以外のなにものでもない。
ライオンの前で風前の灯状態の獲物だった。
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