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69.別れ5
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その夜。
圭は空港にいた。
ぼんやりと夜空を見上げる。
「圭くん、そろそろ搭乗時間だよ」
高塚の声にはっとして顔を上げる。
「そうか」
「大丈夫?これからショルとかピゼッティとかと会うんだよ?そんなんじゃ負けちゃうんだから」
そんなことは自分でもよく分かっている。
でも。
こんな状態で日本を離れてもいいものだろうか?
なんだかいけない気がしてならない。
このままでは。
「高塚」
圭の言いたいことはよく分かるのだろう。
彼は黙って圭を見つめる。
「どうしよう。おれ。このままじゃいけない気がするんだ。このまま日本を離れたら本当に蒼と……」
もう逢えない気がする。
「圭くん」
高塚は軽く息を吐く。
「おれには決められないよ。圭くんがきちんと決めないと」
心は大きく揺れる。
ここで日本に残ることを選んだら、ガラコンサートをすっぽかすことになる。
そんな無責任なことは到底できるものではない。
だけど、蒼のことも気になるし。
「圭くん」
時間も時間なのだろう。
ここで迷っている自分もどうかと思うが。
圭はため息を吐いて立ち上がった。
「分かっている。ごめん。キミを困らせるつもりはなかったんだ。ただちょっとごねてみたかっただけ」
「圭くん……」
圭は笑顔を見せて彼の肩をぽんっと軽く叩いた。
「行こう。自分に課せられたものはしっかりこなさないと。それがおれの責任なんだからね」
さっさと搭乗口に向かう圭。
その後姿を見つめてため息が出る。
「おれはなにもして上げられないな」
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