アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
72.指環と契約と6
-
「圭?」
彼は慌てた風に、玄関を開く。
中からは、けだもが飛び出してきた。
待ってましただろう。
お腹を空かせていたに違いなかった。
ぴょんっと飛び出した彼。
圭の足元に寄って匂いを確かめる。
久しぶりだから忘れている様子だ。
しばらく、クンクンしていたけだも。
圭だと分かると嬉しそうに「にゃ~」と鳴いた。
「よ~っし。けだもはご飯な」
けだもを抱き上げ、さっさと中に入っていく圭。
蒼は訳が分からない。
海外に行っている間にショル病にでも感染したのではないかと思う。
ショルも勝手に話を進める傾向にある。
それと一緒だ。
彼の考えていることが見えなくて戸惑っていた。
キッチンに行き、えさを上げている圭。
その間に、蒼は彼の荷物を中に入れて、居間に座る。
お茶でも……と立ち上がると圭に制止された。
「おれ、煎れるから。蒼は座っていて」
「でも」
「いいんだって。ちょっと待っていてよ。大切な話があるんだからさ」
「……なんだよ。大切な話って」
人の話を遮ってまでのことか。
なんだか面白くない。
ばたばたしている彼を横目で見て、つまらないのでテレビでも付けてみる。
そういえば、最近は全くテレビなんて見ない。
元々、好きじゃないってこともあるけど。
圭も見なくても平気な人だから。
この家の中で、出番が少ない電化製品である。
久しぶりに見るテレビは、なにがなんだかわからない。
芸能人の顔も分からなくなってきたなんて。
年を感じてしまう。
ぼんやり画面を見ているが、圭は一向に戻ってくる気配がない。
寝室のほうでがさがさしている音が響いていた。
ちょっと廊下に顔を出してみるけど、がさがさするだけ。
「なんだろう」
ため息を吐いて、しばらく待つ。
しかし、それでも帰ってこない。
蒼は痺れを切らして、寝室に顔を出した。
「圭?なにして……」
寝室は泥棒に入られたみたいにごしゃごしゃになっていた。
彼が持って帰ってきた荷物が乱雑に置かれ、更にクローゼットの中身も引っ張り出されている。
「ちょっと。なに?なんなの。これ」
「あ、蒼。ごめん。後で片付けるから」
荷物に埋もれていた圭は顔を上げる。
なんだか焦っているみたい。
探し物でもしているのだろうか。
「片付けはいいけど。なんかないの?探す?」
「え、ああ。あ、うん」
歯切れが悪い。
なんなのだろうか。
荷物がたくさん出てきて、けだもからしたらわくわくする状況だ。
あっちこっちに隠れて、飛び出してくる。
「わわ。けだも。遊びじゃないんだから」
圭はけだもの相手をしつつ悪戦苦闘している。
「なに探しているの?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
546 / 869