アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
72.指環と契約と7
-
「えっとね。このぐらいの箱」
「箱?」
圭が指で示した箱は小さい。
「なに入っているの?」
「う~ん。大切なものなんだよねえ」
「何色?」
「えっと。紺色……」
そんな箱、見たことない。
自分がいない間に購入したものだろうか?
蒼も一緒になって荷物を避ける。
と言うか、この荷物が邪魔だ。
荷物がごった返しているので見付からないのではないか?
そんな疑問が過ぎると可笑しくなってしまう。
思わず笑ってしまった。
「なに?」
「ううん。なんだか効率が悪いな~って思って」
いつまでも笑っている蒼。
圭も釣られて笑う。
「本当だ。まったく。自分が嫌になる。要領が悪いって言うか」
「そういうところが圭のいいところでもあるんじゃない」
「そう思ってくれるの?」
「おれはいつも思っている」
蒼の言葉にほっとした。
笑顔の蒼。
圭は嬉しくなる。
蒼の笑顔を見るとほっとするのだ。
ぽかぽかのお日様の中にいるみたいで。
いくら外に出かけて行っても、ここが帰ってくる場所なのだと思えるから。
「蒼。ごめんな。迷惑かけてばっかで」
「え!」
荷物の間から顔を出す蒼。
首を横に振る。
「ううん!おれのほうが迷惑かけ通しだよ。今回のこともそうだし」
「今回のことはおれが悪い。東野のことを家に入れたのが発端なんだし」
「それは……」
ごぞごぞと探し物をしつつも圭は続ける。
「後できちんと話そう。東野のこともきちんと蒼に分かっていてもらいたし。それに、蒼が家出している間、どうしていたのかも聞きたいし」
「うん……」
圭は知りたいのかも知れないけど。
蒼にとったら東野のことはあまり聞きたい話ではない。
それに自分のことも。
家出の間、放浪の旅をしていたなんてとても言えない。
怒られるに決まっている。
それよりも。
「おれは演奏会がどうだったか聞きたいんだけど……」
「そうだね。その話もしないと……」
「ショルは元気だった?レオーネとも逢ったんでしょう?」
二人とも四つばいになって話をする。
なんだか変な光景だった。
いつの間にか退屈なけだもはベッドの上に上って丸くなっている。
「うん。レオーネもなかなか大変みたいでさ。ブルーノの評判が上がっちゃって、一緒にいるのが難しくなってきたってさ」
「そっか」
同じ音楽の道でも一緒にいることは叶わないのか。
なら、自分はなおさらだな。
そう思う。
「ショルは?」
「あいつは元気だよ~。なにも変らない。ってか、あいつの裏の顔を見たさ」
「裏?」
蒼はひょこっと顔を出す。
それを真似て圭も。
「あいつは世界のあちこち、行っている先で女性に手を出しているそうだ」
「そうなの?」
「そうなの。イギリスでは、同じく入賞したビクトリア」
蒼は愛らしい容姿の彼女を思い出す。
「うん。あの子」
「そうそう。あの子でしょう。それからイタリアでは、けばい女の子を引き連れてたっけ」
「ふうん」
そうなんだ。
なんだか可笑しい。
「そういう恋愛の方法もあるんだね」
「そんな暢気に言うなよ」
「圭もそうしてみたら?」
もちろん冗談。
そんなことしたらお別れ決定だ。
だけど、圭はむっとした顔をする。
「蒼の意地悪」
「なんで~?」
「人の気も知らないで。そんなこと言うなよ」
怒られるなんて思わなかった。
蒼は苦笑する。
「そんな本気にすることないじゃん」
なんでそんなに怒られたのか、蒼には分からない。
しばらく静かになってしまった室内。
なんだか居心地が悪かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
547 / 869