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73.星音堂幽霊事件4
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「へへ。ビビッてるぜ?あいつ」
尾形は事務室の一角にある資料室にいた。
ちょっとした隙間から尾形と星野、吉田は蒼の様子を伺っている。
「おろおろしちゃって。蒼らしいですよね」
後ろから吉田は苦笑する。
「蒼のくせに生意気だからな。普通に恐がればいいんだって」
星野も可笑しそうに笑う。
「泣きそうですよ?どうします?」
「そうだな。そろそろ出て行ってみるか」
「さすがに泣いちゃうと困りますからね」
くすくす笑っていた吉田。
ちょんちょんと肩を叩かれた。
「ちょっと、尾形さん。悪戯はやめてくださいよ」
「なんだよ?おれはなにもしてないぜ?」
狭い資料室だ。
一番前に星野がしゃがみこみ、その次に尾形、一番後ろに吉田がいたのだ。
吉田はてっきり、尾形が手を回して肩を叩いたと思ったのだが。
「え?じゃあ星野さん?」
「なんでおれがお前の肩に手をやれるんだよ?しゃがんでいるだろうが」
「じゃあ……」
吉田はそっと後ろを振り向く。
真っ暗なそこ。
なんだか嫌な感じがした。
ざわっとした。
「出た」
「へ?」
「出た~~!!」
吉田はわ~っと叫んで前に傾く。
「おい!押すなよ!!」
わ~わ~なって混乱する三人。
吉田が後ろから押したせいで、星野と尾形は前に押し出される。
そして、資料室から事務室になだれ込んだ。
「ひゃ!!」
蒼はびっくりしてしゃがみこむ。
もう恐くて逃げるなんてことは出来ないみたいだ。
「押すなよ~!痛いだろう?」
ぶうぶう文句を言う星野の声を聞きつけ、そっと様子を伺う。
資料室から飛び出た三人は床に座り込んでいた。
「あれ!どこ行っていたんですか~!心配したんですからね!!」
蒼は三人のことを上から眺める。
「三人で隠れていたなんて、ひどいです!騙したんですね」
事情を察知して蒼は怒る。
しかし、吉田は尾形にしがみついていた。
「吉田さん?」
「出た、出たよ、出た!」
「なに言ってんだか。この子は」
星野は頭をかく。
しがみつかれた尾形は迷惑そうだ。
「だって、誰もいないのに。誰もいないのに、肩叩かれた」
「へ?」
三人は顔を見合わせる。
「ま、まさか」
「本当ですよ!誰もいないのに。肩をぽんぽんって」
開け放たれた扉。
中は真っ暗で吸い込まれそうだ。
さすがの尾形と星野も顔色を悪くする。
「冗談はよせよ」
「そ、そうだよ」
笑ってみせるが、顔は引きつる。
黙って見ていた蒼も顔色が悪かった。
彼はまっくらな資料室に釘付けだ。
「な、なんだよ。蒼まで」
資料室を背に座っている星野は苦笑いをする。
「え、だって」
「なに?」
「いや。そこ」
「は!?」
あまりの恐さに妙に大きな声を出して後ろを振り返る。
そこには真っ黒い影が立っていた。
それは明らかに人の形。
四人は「ぎゃ~!!」っと悲鳴を上げて腰を抜かす。
蒼はまだしも、星野や尾形、吉田は資料室の入り口付近にいたから大変だ。
逃げたくとも腰砕けになっているので思うようにその場を離れることが出来ない。
「た、助けて!」
「ぎゃ~!!」
あたふたとしている職員たち。
しかし。
「なにしてるんっすか?みんなで」
ふと聞き覚えのある声が響く。
はっとして視線を上げると、資料室の入り口には三浦が突っ立っていた。
「み、三浦?」
「なんで!?」
「お前、帰ったんじゃ……」
半泣きの三人。
「やだな。おれ、仕事たまっていたから、仮眠とってからやろうかなって思ってて。そしたら、もぞもぞ話し声が聞こえるからなにかな~って思って」
三浦は異様な雰囲気の事務室内に瞬きをする。
「な、なんっすか?なに?なにがあったの?」
気の抜けたような事務室。
蒼は胸をなでおろす。
「もう恐い話はこりごりだよ」
そっと呟いて、側に椅子に座った。
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