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75.嫉妬2
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お茶を飲みながら書類に目を通している水野谷。
パソコンを睨みつけて黙り込んでいる氏家。
眠そうに背伸びをしている高田。
水野谷の目を盗んでお菓子をつまみ食いしている尾形。
こっそり携帯でメールをしている吉田。
そして、蒼。
彼は受付のカウンターで三浦と言う新人の男と真剣に話し込んでいた。
なにしてるんだろう?
蒼も先輩だから、仕事を教えているのだろうか?
星野はどこだろう?
きょろきょろする。
「さっすが~!蒼ちゃん。おれの尊敬する大先輩っす!」
ふと三浦が手を鳴らす。
蒼は恥ずかしそうに照れているが、咳払いをした。
「なに言ってんだよ!褒めたって仕事軽くしてあげないんだから。ちゃんとやらないとダメでしょう?ほら。しっかり。もう一回、最初から確認するよ」
「は~い」
三浦は嬉しそうに蒼を見下ろす。
蒼は書類を読み上げる合間に、彼を見上げる。
傍から見たら微笑ましい光景なのだろう。
麗しき先輩後輩の指導の場面だ。
だけど。
圭はなんだか面白くない。
「なんだよ~。あいつ、蒼に近づきすぎじゃないか?ってか、なに?あれ。蒼も先輩ぶっちゃってさ」
自分には見せない一面。
それを三浦に見せている。
そう思うと、なんだか気が気じゃなかった。
「圭くん……」
「うるさいなあ。ほっといて」
高塚の言葉なんかそっちのけで、熱心に覗き見を続ける。
と、肩を叩かれた。
「うるさいってば。高塚」
「あの~」
「なに!?」
振り返ってびっくりする。
そこにいたのは星野だった。
「なにしてんの?お前」
「ほ、星野さん?」
「世界に名だたるヴァイオリニストが覗き見とは、いけない趣味だねえ」
「これは、その。違くて」
「なにが違うんだよ?完全なる覗き見じゃね~か」
彼は愉快そうに笑い、そして大きな声を上げる。
「おお~い!ここに覗き見犯がいるぞ!お~い!!」
「ちょ、ちょっと!!」
焦っても遅い。
事務員たちはぞろぞろと出てくる。
「圭!?」
蒼は狐につままれた顔をしていた。
「なんだ。覗き見って。関口のことか」
尾形はもぐもぐしながら笑う。
「なにも、そんなところにいないで入ってくればいいのに」
人騒がせだなあ、と水野谷は苦笑いだ。
「すみません」
言い訳のしようもない。
しかし、星野は面白そうに話出す。
「こいつは愛しの蒼がどんな姿で仕事をしているのか、こっそり覗き見したかったそうだ」
「ち、ちが!な、なに言ってんですか!!」
顔を赤くする圭。
蒼は吹き出す。
「ちょっと~。恥ずかしいから。そういうことはしないでよ」
「だから!違うって!!」
「嫌だね~」
焦っている圭を尻目に高田は手を振る。
「おいおい。蒼がオフィスラブしてないかどうか、監視していたんだろう?嫌だね~。男の嫉妬は」
「高田さん!!」
職員にからかわれて、身も蓋もない。
収拾もつかないので、高塚が口を挟む。
「あの、すみません。これからリハなものですから……」
「お、そうだったな」
星野は圭を見る。
「お前さんの星音堂デビューだ。期待してるぜ」
「はい……」
高塚に引っ張られて、圭はしょんぼり練習室に入っていく。
それを見送って蒼は笑うばかり。
「おいおい。笑ってる場合じゃないぞ?」
席に戻る職員を他所に、星野に声をかけられる。
「へ?」
「修羅場になんねーといいけどな」
「?」
彼は「面白かった~」と笑いながら席に戻っていった。
蒼にはさっぱり、なんのことだか分からなかった。
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