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81.不幸は突然に8
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「ただいま~」
結局の残業。
今日は高塚も来ているので早く帰ってくるつもりだったのに。
圭のコンサートもあるので、結構、やることがたくさんあるのだ。
中はふんわりいい香りがしていた。
「あれ?」
首を傾げて入ると、高塚がエプロンをして出てきた。
「お帰り~。蒼ちゃん」
「どうしたの?作ってくれたの?」
「ええ。少しは。後半分は近所のおばあちゃんが作ってくれて」
「おばあちゃん?」
「そこの茶色の家の梅津さんっておばあちゃんと知り合いになってさ。今日、廃品回収の手伝いしたから、そのお礼で作ってもらった」
背後から来た圭。
蒼は意外で笑う。
「圭が廃品回収のお手伝い?」
「悪いかよ」
「ううん。珍しいね。今日は練習頑張るんじゃなかったの?」
「いいじゃん。たまには。おれだって地域に貢献したってさ」
圭は軽く笑って居間に戻る。
「高塚くん。待ってて。手伝うから」
「え、いいですよ」
「いいの」
蒼はバタバタと寝室に走っていく。
着替えをしてくるらしい。
それを見送って、高塚と圭は顔を見合わせる。
なんとか蒼に気付かれずに過ごせるものか?
縫合してくれた病院に行った。
担当医師がまだ居たので、再び診てもらったが。
しっかり怒られた。
安静にしろと十分に言われていたからだ。
しかし、そうはいかない。
圭と高塚は事情を話す。
医師は呆れていた。
プロなら健康管理も仕事の内でしょう?
そう怒られた。
最もな意見だった。
しかし、もう起きてしまったことなのだ。
それをなんとかしてもらいたいとお願いした。
医師は本当に険しい顔をしていた。
圭とさほど年齢は変わらない男だった。
とりあえず、毎日、診せに来ることを条件に、強い鎮痛薬と止血剤と、ぎっちり腕に包帯を巻かれた。
ちょっと窮屈だが仕方がない。
循環障害にならないように、指先の感覚、色をよく観察するように言い渡された。
なんとかしなければならないのだ。
なんとか。
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