アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
84.暗闇6
-
「どうせ、自分で招いたことを蒼とかに八つ当たりしてんでしょう?調子に乗るのもいい加減にしなよ!」
「な、なんで、そんなこと……」
思い当たる節があるから言い返しようもない。
言葉に詰まっていると、桜は爆笑した。
「図星か!本当に単純な男だね」
「ひどいです。鎌かけたんですか?」
「あんたならやりかねないと思ってね」
彼女はいつまでも笑っているが、圭は面白くない。
なんでも見透かされているみたいだ。
来るんじゃなかった。
そう思う。
しかし、桜は自分もビールを飲みながら愉快そうに続ける。
「また家出しちゃうかもよ~?蒼」
「そ、そんなことはないです」
「あらら?そんな自信はどこから来るのかしらね?」
言葉に詰まる。
「精神的な圧力をかけるのだって立派なドメスティック・バイオレンスなんだからね!」
「桜さんに言われたくないんですけど……。野木さんのこと、DVしているじゃないですか!」
「心外だねえ。あたしの場合は愛のあるDVだから」
「どっちもどっちですよ。結局は暴力行為じゃないですか」
いつも見ているが、野木に対する扱いといったらない。
野木はマゾなんじゃないかと思う。
桜は女王様だ。
頬を膨らませて、ビールを飲んでいると、突然。
頬をつねられた。
「いでででで……ッ!」
「生意気な子ねえ!まったく!さすが圭一郎の息子だわ!」
「い、いだい……」
手が離れ、ひりひりする頬を擦る。
「桜さんっておれに対する態度がひどくないですか?なんか恨みでもあるんですか?」
前々から思っていた。
乃野木対するそれとは違う。
なんで執拗に突っかかってくるのだろうか?
疑問だった。
「別に。あたしは平等じゃない」
「違いますよ!蒼とかには優しいし。おれにだけですよ!」
「生意気言うんじゃないの。誰があんただけ特別扱いするもんですか」
「だって……。あ!分かった。父さんに恨みがあるんじゃないですか?昔からの知り合いですもんね」
「それは……」
彼女は言葉に詰まる。
珍しいことだ。
どんなことでも、すらすらと切り返してくる頭のいい女なのに。
図星?
「そうなんですね?」
「ち、違うわよ!誰があんな針金男なんかに……」
「桜さん……」
彼女はぷいっと視線を反らして、そしてしょんぼりしていた。
図星か!
聞いてはいけないことだったのか!?
初めてのことに、圭はドキドキした。
元々、蒼みたいに人の事情に首を突っ込むタイプではない。
そのせいで、こういう場面で彼女にどんな言葉をかけたらいいのか分からないのだ。
「えっと。その。すみません。桜さん」
とりあえず謝っておけ。
しかし、桜はしゅんとしたままだった。
「あっと。えっと。あの。すみませんでした!ご馳走様でした!!」
圭は仕方なく、慌てて店を後にする。
テーブルの上に置かれた千円札。
それを見つめて桜はため息を吐く。
「都合が悪くなるとすぐに逃げるんだから。本当にそっくりね」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
642 / 869