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85.主夫の1日4
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次に向かったのは梅津さんのお宅だ。
大福を抱え、訪問すると、彼女の家には近所のおばあちゃんたちが数名集まっていた。
井戸端会議をしているらしい。
「あら、関口さん。よくなったんですか?」
「すみません。ご心配をお掛けしました」
梅津さんは70台。
孫ほどの若い男が尋ねてきたとあっては興味の対象だ。
居間から顔を出しては引っ込めているお友達。
なんだか笑ってしまう。
中学校のクラスの女子を思い出した。
「梅津さん。玄関ではなんだし。上がってもらったら?」
痺れを切らして、一人のおばあちゃんが声をかける。
「それもそうね。漬物が上手にできたからみんなでご相伴していたところだったの。あなたもお上がりなさい」
「でも、」
「いいの、いいの」
大福だけ置いて桜の店に行こうと思っていたのに。
半分強引に引きずられて上がり込む。
居間に顔を出すと、中には4名ほどのおばあちゃんたちがいた。
彼女たちはきゃっきゃして喜んでいる。
「いらっしゃい」
「どこの子だい?」
「関口さんって。ヨネさんのところの後に入った人なんだよ」
梅津さんの説明に、「ヨネさんのところかい」と口々に言うおばあちゃんたち。
「そういえば、ヨネさんがいなくなってかれこれ1年は経つものね。あの家は日当たりも良くていい家だったから、よかったんじゃないの」
「そうそう」
みんな昔からここに住んでいる人たちだから、以前の住人のほうに愛着があるのだろう。
「で、あんた。随分若いけど、なんの仕事しているんだい?」
そこか。
日中、ぷらぷらしているから仕事をしていない人だと思われることには慣れた。
「あの」
圭が口を開くと、梅津さんが遮る。
「この人はすごいんだよ!えっと、なんだっけ。あの。楽器」
意気揚々と言い出したのはいいものの、おばあちゃん世代にはヴァイオリンと言う名称は覚え難いようだ。
「ヴァイオリンです」
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