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88.乱入者登場1
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市制100周年記念音楽祭は大成功に終わった。
観客は市民の一般公募。
そのみんながほくほく顔で帰宅する様を見て、蒼はなんだか嬉しくなった。
そんな客たちを見送る安齋も同様な表情である。
蒼は苦笑した。
本当に緊張していたらしい。
昨日の騒動のおかげで、今日は真面目にやろうと誓い合っていた星音堂職員たち。
しかし、昨日の今日で心を入れ替えたところで、急に出来る職員になれるわけがない。
結局、いろいろと安齋の足を引っ張ってしまった。
蒼からしたら、終わりよければ全てよし、と言う感じだけど。
最後の一人まで見送って、片付けが済む。
保住が星音堂職員にも謝辞を述べ、後日、打ち上げをする約束をして解散宣言をすると、安齋は日勤ですぐにでも帰れる吉田の首根っこを捕まえて連行していった。
蒼は星野と一緒にそれを見送る。
なんだか気の毒に見えた。
あの調子だと、お褒めの言葉を頂けるとは到底思えなかった。
しかし。
星音堂職員は手放しでは喜べない。
なにせ、今度は自分たちの番なのだから……。
今回は本当に時間がない。
結局、個人練習を強いても、なにも進歩がないことが明らかになり、職員は休憩を返上して、朝練、昼練、夜練と一日中、練習に明け暮れることになった。
水野谷の苦渋の選択で、もっと切羽詰まれば、必要最低限の仕事に留め、勤務中も練習に当てるなどと言う話まで出たくらいだ。
遊びではない。
これは星音堂の記念事業であり、仕事の一環なのだ。
いつもぐーたら仕事をしている職員にとったら、仕事と遊びの境が曖昧であるが。
今回ばかりは遊びにもならないくらい真面目に取り組まなくてはいけないくらいの話なのだ。
自分たちのミュージカルも問題であるが、後半部分の客演のところも調整が大変である。
以前、水野谷が人身売買めいた取引を関口圭一郎としていたおかげで、数年先まで予定の埋まっている彼が来てくれることになっていたからだ。
世界的なマエストロの公演である。
しかも、彼の活動拠点は海外で、国内での演奏は年に数回程度。
さらに、そんな演奏が無料で聞けるとなると、問い合わせが殺到することは目に見えていた。
案の定、企画内容の発表前だと言うのに、どこからか情報が洩れだして、問い合わせが着ている状況だった。
多忙な彼。
彼自身は「いいよ」と言ってくれたものの、スケジュールの調整は困難に近かった。
本当にやってもらえるのだろうか?
水野谷は頭が痛む。
オーケストラはアマチュアでは無理と言うことで、費用をかけてプロを頼むことになったし。
その調整も忙しい。
結局、あっちもこっちも忙しい状況には変わりがなかった。
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