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91.家族に病人がいるということ5
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金子との打ち合わせを終えて、帰宅した圭。
彼との仕事はもう少し先だ。
悪い男ではなかった。
凄く自分に自信があるみたいだった。
東京行きは、その機会に色々なことをこなさなくてはいけないから。
宿泊しても疲れが取れることはない。
新幹線での移動時間もあり、負担であることは確かだった。
だから、帰ってくるとゴロゴロとしたくもなる。
朝もなかなか起きられない。
早起きする気もない。
夜はぐっすりと寝ていたいのに。
そんな中、嫌な電話が鳴った。
「は?なに?もう一回言って……」
緊迫感のある声。
一瞬、どっきりする。
蒼は不安になって跳ね起きる。
居間に鳥を見に行っていたけだもも戻ってきた。
「どこ?どこの病院?ああ、そう。分かった。急いでいくから」
圭はチンと電話を切る。
「病院?誰?」
蒼は圭の側に行く。
彼は顔色が蒼白だった。
「圭?」
「倒れた」
「え?」
「父さんが。倒れたって」
圭一郎が?
あの元気いっぱいの彼が?
蒼も不安になる。
「た、倒れたって。どういう……」
「たまたま、東京での仕事があってこっちに戻ってきたらしいんだけど。昨日、公演があって自宅で就寝したらしいんだ。だけど今朝方になって急に背中が痛いって言い出して……」
圭の手は震えている。
蒼は圭の手を握った。
「行こうよ」
「蒼」
「おれも行く。明日も休みだし。なんとかなるよ。とにかく行ってみよう。どうなっているのか分からないもの」
こんな早い時間に交通機関は動いていない。
車で行くしかないだろう。
けだもを預けるといっても、こんな朝一で桜の店に行ってもおきてこないに決まっている。
けだもを乗せて、車で東京に行くのが手っ取り早い。
蒼はそう判断して、圭を見る。
彼は呆然としていて頭が回っていない様子だ。
「圭!しっかり」
「ごめん。おれ……」
ショックだ。
圭はショックだった。
「まだまだ教えてもらいたいこと、たくさんあるんだぞ。死ぬなよ。ばか」
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