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91.家族に病人がいるということ9
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圭一郎の病気の件は巷に流出していた。
火曜日、仕事に出勤していくと、さっそく星野たちから質問攻めを喰らった。
「おいおい!どうなんだよ!」
「マエストロの具合はどうなんだ?」
テレビっこではない蒼は気付いていなかったが、昨日の時点でマスコミにはリークされていたらしい。
ワイドショーなどで騒ぎになっているとのことだった。
「NHKのニュースでもやってたぞ?」
尾形も興味津々。
「蒼は行ってきたんだろう?」
「どうなんだよ」
「どうって……」
どこまで話したらいいものか。
星音堂の職員たちが、さまざまな情報を外部に洩らすとは考え難いが。
家族でもないし。
どこまで話したらいいのか……。
おろおろしていると、ふと水野谷が声を上げる。
「手術は成功だ。後は本人の体力次第……ってところだろうな」
「課長」
「今日、ニュースでやっていたぞ」
「そ、そうなんです」
蒼は頷く。
「本当にそうなんです。手術は結構かかりましたけど、なんとか無事に終わって。おれは家族ではないので面会は出来ませんが。圭とかおりさんが付き添っています。それから圭の妹の朱里ちゃんも……」
水野谷の助け舟に乗り込んで蒼はほっとした。
「なんだ。詰まらん」
吉田は目新しい情報が聞きだせるものだと思っていたのか。
少しがっかりした顔をしていた。
蒼はそっと水野谷を見る。
彼はそ知らぬふりをして書類に視線を落としていた。
助けられた。
彼に。
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