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98.剔抉1
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それから蒼は、羽根田との楽しいひと時を過ごした。
彼は、いろいろな分野の話を、なんでも話せる人だった。
しかも、上に立つ人と言っても、規模が違う。
市役所の上司なんかとは全く違う、柔軟で、融通の利く、多彩な考えの持ち主だった。
最初は気恥ずかしい思いだったけど、いつの間にか彼のペースに巻き込まれて、すっかり時間が過ぎてしまっていた。
あっという間。
気が付くと、時間は23時を回っていた。
「悪いね。遅くなってしまって」
自宅の前まで送ってくれた羽根田。
「いいえ。楽しかったです」
「よかった。また懲りずに付き合ってほしい」
次の機会なんてないだろう。
蒼は思う。
こんなに多忙な人と食事なんてできるはずがない。
せっかく、仲良くなれたのに。
なんとなくさみしい気持ちもあるが。
「機会があればですね」
「そうだな」
下りるのもなんだか名残惜しい気持ちもある。
この数時間で、蒼はすっかり羽根田という男に魅了されていた。
社会人として、同じ男として。
いろいろな面で尊敬できる、素晴らしい人だと思ったからだ。
よい部分も悪い部分も。
正直に口にする。
そこがずるい気もするけど。
彼の立場を考えると当然の行為である気がした。
自分は人の上に立ったことはないけれど。
彼がいろいろなものを背負って、それで、今の彼がここにいるってことがよくわかったから。
「それにしても。君のお宅はにぎやかだね」
ふと羽根田の言葉で現実に引き戻される。
圭がいるだけのはずなんだけど。
大騒ぎの音が玄関先にまで漏れている。
近所迷惑になってしまう。
せっかく、近所の人たちとも仲良くしているところなのに。
誰を連れ込んでいるのだろう。
「あはは……」
「お友達と住んでいるといっていたね。お友達が集まっているのかな?」
「さあ……」
ここは、早めに羽根田を返したほうがいいだろう。
なんとなく気まずいからだ。
「あの。じゃあ、これで」
蒼はあわてて、車から降りる。
と。
悪いタイミングはよくあるものである。
玄関から、一人の男が飛び出してきて、道路の真ん中に仁王立ちになった。
住宅街にある自宅なので、前の道路はしんと静まり返っているが。
目立つ。
派手な男。
「あれは……」
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