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101.素性2
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あの日。
圭との別れをしてから。
蒼はその足で東京に向かった。
羽根田家に行くためである。
自分がどういう扱いになるのか。
羽根田からはなんの提示もなかったので、気が気ではなかった。
はっきり言えば、羽根田の妻やその娘たちから見たら、蒼は愛人の子である。
受け入れてもらえるはずがない。
てっきり、自分は羽根田の元で仕事をするようになったとしても、一般職員扱いをしてもらえるものだと思っていたのが間違いだった。
羽根田のところに来てほしいというのは、羽根田の跡を継げる人材になってほしいという意味だったのだろう。
そんな大変なことに巻き込まれているなんて実感がなかった自分も悪いのだが。
羽根田の家に連れられて行くと岩見に告げられた時。
なんだか死刑宣告をされた冤罪人の気分だった。
どんな顔をして、羽根田の妻や娘に会ったらいいんだろう。
罵声を浴びせられるんじゃないか?
水でもかけられたりして……。
いやいや。
昼ドラの見すぎである。
だけど、申し訳ない気持ちでいっぱいなのはなぜだろう?
空のしたことが悪いことなのだろうか?
空が羽根田と付き合っていたころ、羽根田は結婚していなかったのだから。
なにも悪いことではないはずだ。
羽根田が悪い。
そう。
彼が一番悪いんだろう。
ふらふらしていたのだから。
結果的に、羽根田は、今の妻と結婚したから、空は愛人的な立場になってしまっているけど。
本当だったら、空が彼と結婚していた可能性だってあるわけだ。
そうか。
そうなんだ。
でも。
でも、今の妻は羽根田の妻。
空は違う。
自分は……。
認知されていない。
戸籍上で言ったら、まったくの赤の他人。
なんだか気持ちがすぐれなかった。
東京までの道のりは遠かった。
だけど、自分のことを気遣ってくれる岩見が優しく感じられた。
羽根田もそうだ。
だけど、彼の優しさ。
素直に受け入れられない自分がいる。
こんなはずじゃなかったのに。
父親ってこんなひどいことをする人なのだろうか?
なんだか、遠い昔。
ショルティに会うため、有田に連れられて東京にいったことを思い出した。
あの時も、有田がいろいろな話をしてくれて気分を和ませてくれたから。
有田と岩見は似ている。
人に使える身になる人は、そういう傾向になるのだろうか?
いつもは自分を抑えて仕事をしているのに。
こういう、どうでもいい自分なんかに気を使ってもらうのは本当に申し訳ない気がした。
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