アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
103.それぞれのこと6
-
なんだか調子が狂う一日だ。
午後は、新しいヴァイオリニストに会うのだと聞かされている。
まだ駆け出しらしいが、コンクールの優勝歴などが付いたので、早くに手を付けて、抱え込もうという作戦らしい。
ヨーロッパでうまくいけば、日本にも連れて行きたい。
それが狙いだろう。
日本はまだまだクラシック発展途上国だ。
ビジュアルがよければ売り出せる。
ただ、羽根田のやり方は、アイドル養成とはわけが違う。
レベルを維持しつつ、王子様、高貴なイメージでの売出しだ。
品よくやるためには、作戦も必要である。
まずは、その目利きをするための面接らしい。
「おれなんかが聞いてもわからないと思うけど」
「そんなことはありませんよ。一流のヴァイオリニストと一緒に暮らしていたじゃありませんか。適任です」
厭味か。
蒼はまたぶすっとして車の外に視線を向ける。
奥川女子は悪い人間ではない。
ただ、一言多いというか。
これじゃあ、彼氏もできない訳だ。
かわいくないもの。
男の自分がそう思うのだから、世間一般の男子も同じく思っていると思う。
「蒼さんの目利き、期待していますから」
プレッシャー……。
蒼はしゅんとして外に視線を向けていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
794 / 869