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105.恋を患う4
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「あの人のことだったら星野さんに聞いた方が詳しいと思うけど……」
「あ、あの。そうじゃなくて……」
篠崎は言いにくそうに三浦を見る。
「なに?」
「えっと……」
違うんです。
そうじゃなくて……。
彼は三浦を見る。
「そうじゃなくって。あの。いなくなった人の話をしていましたよね?」
三浦はどっきりする。
「え……」
「その人って、ここの職員だった方なんですか?おれ、なにも知らないし。口を出すことじゃないとは思うんですけど。どうしても気になっちゃって」
篠崎に言うような話ではない。
だけど、ここにいたら、否応なしに耳に入ってくる話だ。
他の人からどう伝わるかはわからないけど。
三浦は息を飲んでから、声を上げる。
「お前が入ってくる前に、お前の席に座っていた人だよ」
「そうなんですか?」
「おれの先輩で。なんか事情があって急に辞めるってことになっちゃって」
「辞めたんですか?」
「そう。あの関口さんが仲良しだったんだけどね。彼もその人の所在を知らなくて。おれたちも、突然だったから、今どうしているのかとか、まったくわからないんだよね」
平常に装おうとするのは辛い。
心臓がどきどきした。
なにを焦っている。
自分の気持ちを篠崎に話している訳ではないじゃないか。
どうして、こんなに動揺するのだろう?
「あの。」
「は?」
三浦は篠崎を見る。
彼は首をかしげて三浦を見ていた。
「三浦さんって、その人のことを大切に思っていたんですね」
どきっとした。
「ど、どうして……」
「だって。あの関口さんが来たとき。その人の話をしているとき。すっごく心配そうでしたもん」
「そ、そっかな」
「そうですよ。大丈夫ですよ。きっと。きっと元気でいますよ。その人」
篠崎は、そういういうとにっこり笑顔を見せた。
そういう問題ではないのだ。
だけど。
事情も知らない篠崎にやんや言っても仕方がないから。
「悪いな。気を遣わせて」
そう答えた。
篠崎は、三浦の回答に表情を明るくし、「いえいえ」と答えた。
三浦には、篠崎の考えなんかよく分からない。
それよりも自分の気持ちの整理をするほうが忙しかった。
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