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107.憂鬱な恋の行方3
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「だ、か、ら!」
酔っぱらった高田は手ごわい。
篠崎は首根っこをつかまれて説教される。
「若いやつが盛り立てないでどうする?ねえ課長」
水野谷も上機嫌だ。
仕事の疲れも忘れて。
サラリーマンは元気だ。
高田は妻との喧嘩のうっ憤を晴らそうとしているのだろう。
さっきから篠崎に絡みまくりだ。
それを見ていた吉田や星野、氏家も盛り上がっている。
「もう、いい加減にしてあげてくださいよ。高田さん」
プライベートで声をかけてこなかった三浦が、ふと篠崎のフォローに入る。
「おいおい。若いもの同士でなんだよー……」
高田は「おれが悪者じゃねーか」とぼやく。
「いいじゃないっすか。高田さん。若いっていうのは、若いだけでいいんですってば」
尾形は笑う。
「そしたら、後から生まれたほうが得じゃねーか」
「そんなことしていたら、いつまでたったって勝てませんよ」
吉田も笑う。
それはそうだ。
若いから得ってわけでもない。
篠崎からしたら、先輩たちのほうが尊敬に値するし。
自分なんかペーペーで嫌になるくらいなんだから。
篠崎は高田に伝える。
自分の気持ち。
「おれは、本当にここに入れてよかったと思っているんです。みんな、すっごい先輩で。おれなんか何年、何十年たっても足元に及ばないような人ばっかりですから」
いつもは大した話もしない篠崎が突然、話をするので、一同はびっくりする。
「おいおい。そんなお世辞はいらないんだぞ?」
高田は苦笑する。
「お世辞なんかじゃありません。おれ、本当に尊敬しているんですから」
いつもは自分の気持ちを話すような子じゃないなのに。
なんだか、そんな篠崎から発せられる言葉は、重みがあった。
高田も照れ隠しなのだろう。
酔っているせいなのか?
顔を赤らめて口を閉じる。
なんだか、みんな黙ってしまったので、悪いことを言ってしまったと篠崎は後悔した。
しかし。
氏家も、尾形も。
みんな、なんだか気恥ずかしそう。
「す、すみません」
「いや、」
「な、なんか照れるよな」
にやにやして、星野も笑う。
「お前にそういう風に思ってもらっていたなんて。みんな、光栄に思うぞ」
水野谷も満足そうに頷く。
「あ……」
そっか。
そうなんだ。
こうして。
気持ちを言葉にして伝えると。
みんな自分を理解してくれる。
なんだか。
ちょっと。
照れくさいけど。
なんか。
いい気持ち。
篠崎は一緒に笑顔になった。
大した言葉も発していないけど。
なんだか、みんなで笑顔になって。
あったかい気持ちになった。
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