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108.会いたい1
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仕事の合間の休息なんてものは存在しない。
しかし、ちょっとした合間を見つけては、パソコンを眺めていた。
見ているのはもちろん。
星音堂のホームページだ。
「また文化祭やるんだ……」
笑ってしまう。
今年のテーマは「不思議の国のアリス」。
「だんだん、マニアックな話になってくなー……。あのメンバーで、どういうキャストにするんだろう?アリスは吉田さんかな?」
星野は、なにをやるのだろう?
意地悪な役だな。
クスクス笑いながら想像すると愉快で仕方がない。
自分がいたら、なんの役になっているのだろう?
そんな現実味のない妄想をしても仕方がないと気が付いて、なんだか恥ずかしい気持ちになる。
無理なことを。
夢みたいなことを。
頬杖を突きながら複雑な気持ちになり、なんだか居心地が悪い。
パソコンから視線を外し、周囲にやると、奥川とばっちり目があった。
「べ、別に。怪しいサイトを見ている訳じゃないし……」
「誰もそんな風に言っておりませんけど?」
彼女は、表情一つ変えずに答えるが。
悪い気はしていない様子が、蒼には分かる。
彼女との付き合いも長くなってきた。
彼女の考えていること。
少しずつ分かるようになってきた。
「今日は少しゆっくりペースだからいいですけど。昔の思い出に浸ってばかりはやめてくださいね」
ばれている。
暇があれば星音堂のホームページを見ているのは知られているのだ。
過去に囚われている女々しい男だと思われても仕方ない。
本当だもの。
そう思っていると、携帯が鳴る。
「はい。熊谷です」
『あ!蒼!!』
この声は……。
最近、ちょっと迷惑になりつつある男!
「セバス……」
『最近、ちっとも会えないじゃない!羽根田の仕事を寄越すなら、ちゃんと蒼が来てくれないとやらないんだからね!』
こんなお子様だとは思いもよらなかった。
彼は、すっかり蒼を気に入った様子。
セバスティアン・リュンガー。
16歳。
ゼスプリの優勝者で、実力はショルのお墨付きだが。
まだまだ子供。
なにかあると、こうして電話を寄越す。
クラシックの本場のヨーロッパで、日本企業の名を売るためには、話題性があり、実力のある人材を発掘しなければならなかったので、羽根田にとったら、喉から手が出るくらい欲しい男だった。
だから、こうして契約まで漕ぎ着けた蒼は、羽根田の本社からしたら、なかなか仕事のできる男になったようだが。
内情はただの子供の子守りだった。
なにが気に入ったのか?
セバスティアンは、蒼に頻繁に連絡を寄越す。
しかも、仕事でもないような、どうでもいい内容のことで。
だが、今回の話は初耳だ。
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