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109.路地裏の邂逅1
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一か月の日本は楽しかった。
蒼の情報も仕入れることができたし。
なんとなくリフレッシュ。
桜や乃木、星野たちにも会えたし。
なんだか楽しかった。
だけど、帰ってきて一番に会った高塚からは嫌なような、楽しみなような、お知らせが入っていた。
「……っていうことなの」
「そういえば。随分、前に本人がそう言っていたっけ」
本人とは。
クラウス=ショルティ。
「なんか一緒に演奏しようだの、なんだのって言っていた」
「なんだ。聞いてんじゃん」
「でも!正式には入ってなかったし。なんのことだかさっぱりわからなかったし」
高塚の企画書を見ると、歴代のゼスプリ優勝者の共演らしい。
こういうのって一番、面倒な企画なのだ。
だって、みんながトップだった人なのだから!
プライドが高いのはいうまでもない。
ショルがまとめられるわけもないし。
バラバラになって終わりな企画だろう。
そう思う。
ただ、ショルとの競演は、毎回、圭にとって有益なものである。
久しぶりだし。
楽しみな気がする。
「ってかさ。ショルとだけの競演ってなんとかできないの?」
「おれだって、なんとかオファーだしているけど。スポンサーの問題があって」
「そうだよねえ。そうだよねえ」
圭はため息だ。
なんかの企画に乗っからないとショルと競演できないって。
まだまだだな。
自分。
そう思う。
「打ち合わせは一週間後だから。心してね」
「はいはい」
圭はコーヒーを飲み干すと、ヴァイオリンケースを抱えて立ち上がる。
「もう行くの?」
「しばらく留守にしていたからね。待ってるい人がいるんだよね」
「待っている人って……!?」
浮気か!?
高塚はそう思うが、圭は素知らぬ顔をして、手をひらひらして姿を消した。
「蒼ちゃんと離れて一年近くなってきたからなー……。もう嫌になっちゃったのかな?」
なんだか悲しい。
高塚はそう思った。
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