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113.変革のとき6
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遅番だった篠崎と三浦は、星音堂を閉めると、その足で星野の家に遊びに寄った。
今晩は、彼のところで夕飯をごちそうになる約束をしていたのだった。
篠崎と三浦は、定期的に星野の家に遊びに行くようになっていた。
今晩は、星野の特製ハヤシライスだ。
食事をしながら、出る話題は星音堂のこと。
「三浦はどうするんだ?」
星野の言葉に、彼は笑う。
「おれは決まっています。本庁に戻りますよ」
「だろうな。お前、好き好んでここに来たわけじゃないしな」
「ええ!三浦さん、いなくなっちゃうの?」
エプロンの油井は、がっかりしたように彼を見る。
「いなくなっちゃうわけじゃないけど」
「同じことだろうが。本庁と切り離されれば、接点もないし。星音堂には用ねーぞ」
「そうですかね」
三浦は笑う。
その隣で、篠崎はなんだかさみしそうにしていた。
三浦と一緒に仕事ができているから、こうして一緒の時間が長く取れるのに。
職場がばらばらになったら……。
会うことができるのだろうか?
「そんな顔するなよ。篠崎」
星野は苦笑する。
「お前はどうせ残るんだろう?」
「ええ。だって。おれは星音堂で働きたいために市役所に入ったようなもんですから。市役所で働きたいわけではないんです」
「お前の目的は明確だからなー……」
三浦は篠崎を見る。
「篠崎はきっといい職員になりますよ。星音堂でたくさんのこと学んでいるし」
「とか言って。お前はさっさと本庁かよ」
星野の茶々に、彼は膨れる。
「そういわないで下さいよ。そういう意味じゃないんですから」
「じゃあ、どういう意味だ」
星野はスプーンをマイクのようにして三浦に突き出す。
彼は苦笑して、それをのける。
「辞めてくださいよ」
「話してみな」
「だから」
三浦は一同を見て、恥ずかしそうに始める。
「おれは、星音堂でいろんなことを学んだんです。それを本庁に持って帰って試してみたいって言うか」
「試す?」
「そう。おれは、本庁でのやり方がすべてだと思っていたんです。だけど、星音堂に来て、それってどうなのかなって思う様になって。市民の皆様のための市政ではないといけないって本当に思いました。だけど、同期にその話をしても通じなくて。ああ、おれってそういう世界にいたのかっていまさらながら実感して。いろいろな矛盾も感じてきました」
真面目に話し出す三浦の言葉に、一同は手を止めて聴き入る。
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