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113.変革のとき10
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星音堂の民間への移譲は、とんとん拍子で進んでいった。
市役所に戻るのは、水野谷、三浦、吉田の三名。
氏家、高田、星野、尾形、篠崎は星音堂職員として残ることになった。
離れてしまうのはさみしいが、これもなにかの運命だ。
このメンバーで一生一緒に仕事ができるとも限らないのだし。
残る方にも、離れていく方にも不安がある。
民間移譲の条件のひとつとして、現職員の残留は入れてもらっていたようだが、星野達はかんたんな履歴書を出させられたくらいで、面接なども特にないとのことだった。
仕事をしていく条件についても、現状に順次じるとしか伝えられてなかった。
2月になり、さすがに焦りが出てくる。
水野谷たち、戻り組は異動の中身が内々に決まり、行場が決まりつつあるのに。
残されるほうは、一体、どこの企業の職員になるのかもわからない状況。
氏家に至っては、雇ってもらえるのかすら不明瞭だった。
いい加減に、水野谷に抗議をしようと思っていた頃。
水野谷から、残り組の招集がかかった。
「残るやつらは、本庁にて、新しい自分たちの雇用者と面会してもらう」
待ちに待った言葉だったが、いざやってくると緊張するものである。
「あの。おれは……」
氏家は不安そうに手を上げる。
「ああ。氏家さんも。一緒に」
と、言うことは雇ってもらえるのか?
一同は顔を見合わせる。
「三浦と吉田は留守番。他の職員は公用車に乗り合わせて本庁に集合。14時から顔合わせだ。遅刻しないように」
水野谷の言葉に時計を見ると、すでに時計の針は1時50分を指す。
「課長っていうか。遅刻じゃないっすか?」
三浦の言葉に、彼は苦笑する。
「本当だ」
「のんびりしすぎっすよ」
「本当、本当。課長らしくない」
彼も少しは緊張しているのだろう。
一同はばたばたとコートを持って外に出る。
「あと、よろしく」
「いってらっしゃいー」
「星野さん、その恰好で行くんですか?」
星野はいつものよれよれシャツ。
だって、今日にそんな大事なことがあるなんて聞いていないもの。
「仕方ねーだろ」
もう行くしかない。
彼はバツが悪そうに外に出た。
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