アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
天劔神社の秘密①
-
日曜日の朝、勇とレオは少し遅めの朝食を食べながらユルユルと会話をする。
「この食パンで作るハムマヨはコテコテしてるけど、なぜか朝食にぴったりなんだよな。」
食パンにマヨネーズをかけ、刻んだハムを乗せて焼くだけのこのハムマヨパンは、勇の育て親である叔母がよく作ってくれた朝食だ。1人で生活していた時はしばらく食べていなかったが、今ではレオが作ってくれる。
「ぼくもこれ好き。簡単に作れて美味しい し、コーンスープとの相性にもぴったりだねぇ。」
この後数時間経つと、レオは葉瑠の家へ遊びに行ってしまう。勇は、レオに友達ができたことは嬉しいけど、半日1人で過ごさないといけないのはやはり寂しいようだ。
残酷にも時間が経つのは早く、あっという間に午後となる。
「じゃ、行ってきます! 夕方には戻るから、夕ご飯は一緒に食べようね!」
「ああ、気をつけてな。美味いの作って待ってるからな。」
さっそく家を出たレオは、予定していた時刻の地下鉄に乗り、葉瑠との待ち合わせ場所である天劔(アマノツルギ)神社に向かう。
神社の所在地は、閑静な住宅街を抜けた都内の中で最も坂の多い地形のエリアにある。
参道には占いの店がいくつかあり、都会の喧騒とはかけ離れた面妖な雰囲気に包まれたエリアだ。レオは神社に近づくにつれ、魔力に似たエネルギーを感じるのがどんどん強くなり、好奇心と僅かな恐怖心で胸が踊った。
しばらく歩くと、大きな赤い鳥居が見えてきた。そして鳥居の外側には、会うと約束したクラスメイトの守屋葉瑠が立っていた。さすが神社の家の子だけあって服装もそれらしい。上に白の上衣を着て、下は松葉色の袴を履いている。
「レオさん、お待ちしておりました。ここが我が家が代々神主を務める天劔神社です。」
「今日はよろしくね、葉瑠くん。学校以外で友達と会うの新鮮で、すごく嬉しいよ。」
「と……友達。まだ慣れない言葉に照れますが、ぼくも嬉しいです。では、さっそく宿舎の方に案内しますね。そこには寛ぐこともできる部屋もあるので。」
レオは葉瑠に連れられて、境内の棲みにある小さな宿舎に入った。ここは正月のお守り授与や警備などのバイトをするために、遠方から来る人達向けの宿舎である。
最も普段はほとんど利用することがないので、葉瑠と葉瑠の家族が自由に使っているそうだ。
葉瑠はレオのために冷たい麦茶やお菓子を出してもてなした。
「それにしても立派なお社だねぇ。木々も多くて、自分が都会の中にいることを忘れちゃうぐらいだよ。」
「ありがとうございます。でも、見ての通り参拝者の方が少ないんですよ家の神社……。」
「たしかに言われてみれば……。今日は日曜日にも関わらず見える範囲には人っ子一人いないね。」
「高い坂の上にあって、雰囲気も独特ですからね。正月は祭事もあるので、ご利益を求めにくる参拝者で賑わいますが……。あ、でも感受性の強い方や、オカルト好きの人たちには普段でも人気なんですよ! この前もその手の雑誌の取材も来てましたし。」
「オカルト……取材……はは、なんかそれ聞いちゃうと若干俗っぽくなるけど、ちょっと気持ちが軽くなって安心したよ。神社に近づくにつれて魔力みたいな力を感じるの強くなってきてたからさ。」
「やはり感じますか……。実はこの神社の御神体・アマノツルギをぼくも含めて誰もみたことがないのです。ぼくのご先祖である初代の宮司以外は。」
「え、なら御神体にも関わらず一度も手入れしてないってこと? ツルギって言うぐらいだから、剣のことだよね?」
「ええ……。言い伝えでは、遥か昔、その剣を使っていたのは妖怪の父と人間の母との間に生まれた半妖半人の武人だったそうです。」
葉瑠は、代々伝わる守屋家一族の話をレオに語った。
その半妖半人の武人は、世界に名を轟かす剣豪であったが、彼の時代は元々共存していた世界万国の妖怪と人間が互いに争い始めた頃だった。
彼は妖怪と人間双方から戦いの協力要請が来ていたが、半妖半人の彼は戦いに参加することを拒否し、この地に神社を作り平安を願う神主となったそうだ。
そして、戦いに負けた妖怪たちはこの世界を去り、いつしか神社の御神体も彼の使っていた剣となった。
この剣には初代宮司の妖怪と人間との狭間で葛藤した強力の念が込められており、来るべき時が来るまでに、見たり触れたりしたものには呪いがかかるといわれている。
普通の人間が聞いてもほとんどの人が作り話だと思うだろう。しかし、魔界出身のレオはすぐに理解できた。
「なるほど……話を聞く限り、妖怪はおそらく魔族のことだよね。魔界ではかつて魔族と人間は一つの世界で共存していた時代があったことは誰でも知ってることだし、魔族と人間が恋に落ちて、やがて半魔半人の子が生まれるなんて当時きっとよくあったことなのかも……。」
レオは、まさに今自分と勇が魔族と人間の壁を越えて愛し合っていること話している途中で思い出し、顔を赤くした。
「レオさんどうしました? 具合でも?」
「ううん、いや……その、来るべき時が来たら剣を見てもいいと聞いたけど、その来るべき時とは?」
「それはですね……年を越えて再びこの世界にやってきた妖怪、つまり魔族と神社を守る守屋家の男子が出会い、誓約(ウケイ)をすることです。」
「ウケイ? それは何?」
聞き慣れない言葉にレオがポカンとした途端、葉瑠はレオの顔にぐいっと近づいた。
「え……えっと葉瑠くん……かなり近いんだけど、どうしたの? 」
葉瑠もレオに負けないぐらいの美少年だ。近距離で見つめらるレオは思わず胸がドキドキしてきたようだ。
「レオさん……レオさんがよければ誓約をしてくれる相手になってくれませんか?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 30