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絶体絶命
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勇がゼルに誘拐されている間、レオは1人勇の部屋で寝ていた。
「勇……どこ行くの……? 1人は……もう……。」
「……はっ……夢? 嫌な夢だったな……。」
午前5時頃、汗だくで目を覚ましたレオは、勇が自分を置いてどこか遠くに行ってしまう夢を見たようだ。
夢で感じた孤独感がまだ残っている。とても寂しい気持ちや恐怖で体が震えている。
レオは隣で寝ている勇にくっついて、心を落ち着かせようと思った。
「あれ、勇がいない……。」
勇が夜中の散歩中に誘拐されたことなどレオはこの時点で知る由もない。
しかし、さっきの悪夢のこともあり、レオは嫌な予感がした。
レオは急いで外に出て、勇を見つけるために魔力で勇の気配を探り始めた。
「これは……まさかそんな……。」
レオは自分と同じ魔族が微量に放出する魔力を感知したのだ。
その魔力を放出している者の正体は、勇を誘拐したゼルだ。
基本的に能力の高い魔族は、自分の魔力をコントロールして気配を消すことができる。
しかしゼルは、レオを誘き寄せるために敢えて魔力を放出している。
レオはゼルの気配から、暗くて冷たい邪悪なものを感じるようだ。
本来避けたい相手だが、レオはゼルに近づいてみることにした。勇が帰ってこない理由と関係している気がしてならないからだ。
レオは急いで気配を辿って行くと、とある廃墟と化した小さな工場ビルに着いた。勇の家からそれほど遠くない場所だ。
レオは固い扉の向こうに、はっきりと2人の気配を感じた。1人は魔族、もう1人は勇で間違いないとレオは確信した。
勇の気配は弱っており、恐怖と痛みに耐え苦しんでいる勇の姿がレオの脳裏に浮かんだ。
レオは予想外の事とは言え、ゼルの存在に気がつかず、勇を1人にしてしまったことを激しく後悔した。
しかし、これ以上勇を危険な目に合わせたくないと思ったレオは奮起し、一度大きな深呼吸をして、固く閉ざされた廃工場の扉を両手で全身全霊を込めて押し開ける。
人間の数倍はある魔族の力で、鍵の掛かった扉が鈍い音を立てて開いていく。
廃工場の中に朝日が入り込み、暗闇の室内が照らし出された。
鎖に繋がれた勇と、その勇の首元に大きなサバイバルを突き付ける男の姿がはっきり見えた。
「レオ……?」
「勇……遅くなってごめん。今なんとかするから。」
勇の体はナイフや鞭による酷い傷で心身共に限界の状態にある。一刻も早く病院に連れて行かなければならない。
レオは勇をこんな凄惨な状態にしたゼルに対して激しい怒りが込み上げてきた。
「これはこれは元王子。私の名はゼル・ストラウス。エナ共和国からあなたを抹殺するために派遣されてきました。」
「いや大変でしたよ。魔界から人間界にいるあなたの位置を特定するのは困難らしく、だいぶ離れたところからの捜索になりました。」
この男を今すぐ最大限の魔力で倒したいと思うレオだが、勇が人質にされているため、下手に動けない。
「目的はやはり自分か。でもなぜ流刑で終わらなかった? なぜ無関係の勇を傷つける……?」
「なぜかって? これから死ぬあなたに教えても仕方ないことでしょう?」
「まぁ、この青年を人質にしてる理由ぐらいは教えましょう。戦闘スキルが高いあなたと直接戦いたくなかったことと、単純に人間をいたぶってみたかった、が理由です。」
この魔族を人間界に野放しにするのは危険すぎると思ったレオは、素早く動きゼルのナイフを蹴り落とそうとした。
しかし、ゼルのナイフの刃が勇の喉の皮膚にめり込むのを見たレオは、とっさに動きを止めた。
レオが止まった瞬間、ゼルは小さなダガー状のナイフをレオの左太ももに投げ刺した。
「あっ……くっ……お前……卑怯だぞ……。」
この傷ではもうスピードが出せない。近づくことが難しくなった。
レオは炎を相手に纏わせる力もあるが、ゼルは並みの魔力の持ち主ではない。効果がそれほどないのが感覚で分かる。
「今度妙な真似をしたら本当にこいつを切りますよ。」
「レオ……おれのことはいい。こいつを倒してっ……うっ!」
ゼルは勇の顔をひっぱ叩いて言った。
「余計なことはしゃべるな。王子もお前も今すぐあの世に送るぞ。」
「しかし、王子も馬鹿ですなぁ。こんな人間なんかのために命を張るなんて。」
レオはゼルを睨み付けるも、逆にゼルのサディズムを助長させるだけだった。ゼルはニヤニヤとしながら言った。
「王子はこの青年と愛し合っていることも私は知ってますよ?」
「そうだ、ここは一つ大切な恋人が目の前で犯される姿を見る元王子の反応を見てみたいですなぁ。」
ゼルは勇の胸をいやらしい手つきで触りだした。
「貴様! 勇に触るな!!」
再びナイフがレオに投げられる。今度は右肩に刺さった。
「おっと……何を焦ってるんです王子? 今からすることで減るものは何もありませんよ?」
ゼルは勇の乳首を舌で弄びだした。勇は衰弱してる上に鎖で繋がれているため、ピクピクと反応するだけがやっとだ。
「こんな状況でも反応するとは、人間はかなりスケベな生き物だな。」
レオは自分が何もできないことと、この非道な男、ゼルに対して頭が狂いそうなほどの怒りが沸いてきた。
「くそ……お前だけは絶対に許さない……。」
隙を見てゼルの視界から一度消え、動揺している瞬間にまだ使える右足で渾身の一撃を喰らわすかとレオは考えた。
しかし、どのタイミングで動けばいいのか分からない。ゼルは勇の背後に回り込み、勇の下半身をまさぐりだし始めた。
ゼルは性欲をむき出しにしている状態でも視線はレオに向いており、油断を許していない。
「おい、悪ふざけはいい加減やめろ。」
突然、レオの背後から声が聞こえた。気配を消して近づいてきたところをみると、おそらく魔族だ。
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