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神社の子
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レオはなんとか学校初日を乗り切ったので、今日からは昨日のような緊張と不安を感じることなく登校できそうだ。
勇も昨日はずっとレオが学校でうまくやっていけるか心配していたが、今日は安心して仕事に打ち込めそうだ。
そしてレオは昨日勇に話した謎のクラスメイト・守屋葉瑠と仲良くなるために、少しずつ会話を試みるつもりだ。
授業と授業の間の休み時間、レオは何度か葉瑠に話しかけようと近づくが、その度に葉瑠は慌てて教室を出てしまう。
葉瑠が筋金入りの引っ込み思案であることは間違いなさそうだが、これほど避けられることにレオは少しショックを受ける。とりあえず葉瑠のことをもっとよく知るために、他のクラスメイトたちに葉瑠がどんな子なのか聞いてみる。
「守屋くん……よく分からない子なんだよね。すごくおとなしくて、全然クラスのみんなと絡まないんだ。」
「ミステリアスでおまけにかわいい顔してるから、影で一定数の生徒には人気があるとかないとか。」
「たしか守屋くんは神社の子だよ。正月に初詣に行くと、お守り売ったり祈祷の手伝いをしてるところとか見かけたな。」
このように様々な返答が来たが、中でも一番興味深かったのは、葉瑠の家が神社であるということだ。
レオは勇に明治神宮や神田明神など、都内の様々な神社に連れて行ってもらったことがあるので、神社がどんなところかだいたい知っている。
特に古い神社では、魔力に似た不思議な力を感じることがあるので、レオにとって魔界にいた時のような懐かしい気持ちになれる場所でもある。
葉瑠が神社の子であるならば、もしかしたら自分が魔界出身であることを見抜く力があるのかもしれない。だからこそ、自分のことが気になり、ずっと視線を向けていたのではないかとレオは思った。
そんな確証はないが、レオは何かしら魔界について知っていそうな葉瑠に益々興味が湧いてきたようだ。
好奇心旺盛なレオは居ても立っても居られず、下校時に気がつかれないよう葉瑠の背後に近づき、両手で葉瑠の目を覆って言った。
「だーれだ!?」
葉瑠はいきなり視界が真っ暗になり、何が起きたか理解できず両手をブンブン降って取り乱した。
「わわっ!ちょっ…えぇぇぇ~!?」
予想以上の慌てぶりにレオも驚いてパッと手を離し、いきなり悪ふざけしたことを謝った。
「ご、ごめんね! つい調子に乗ってしまい……。」
葉瑠はゼーゼーと息を切らしながら答えた。
「レ、レオさんでしたか……。ぼくに何か様ですか?」
今いる場所が校舎の外であり、他の生徒も周りにいないみたいなので、レオは思い切って葉瑠に気になることを聞いてみた。
「その……葉瑠くんて学校の教室でいつもぼくのこと見てるよね。クラスの子達から聞いたけど、葉瑠くんの家って神社なんだよね。何かぼくから感じるものとかある?」
葉瑠はなぜバレたのかという驚いた表情で、うろたえながら答えた。
「ななな、なぜそれを!? そんなにあからさまに見てなかったはずですがっ!?」
目をグルグル回して、顔を真っ赤にしながらおどおどしている葉瑠をかわいいと思いつつも、レオは真剣に答えた。
「葉瑠くん、ぼくは人間よりも身体や感覚の機能が優れているんだ。元々こっちの世界の者じゃなくてさ。」
「と……言いますと、あなたはやはり……。」
「うん……。葉瑠くん、ちょっと歩きながら話さない?」
レオは葉瑠に自分が魔界の元王子であること、人間界に来た経緯、勇のことや姉のアルルのことを全て話した。
「それは大変なご苦労を……。その、魔界でしたっけ? 本当にそのような異世界が存在するとは……。我が家に受け継がれる能力や伝説の謎がこれで解けそうです。」
「能力、伝説?それは一体……?」
「レオさん、とりあえず今日はここまででお願いできますか? かなり長くなってしまうので……。レオさんだけ色々秘密を語らせてしまって申し訳ないですが。」
レオが時間を確認すると、そろそろ勇が会社から帰宅する時間になっていた。今まで魔界について話せる人間は勇以外いなかったので、ついつい話し込んでしまったようだ。
「もうこんな時間……長々とごめんね葉瑠くん。今日は色々話を聞いてくれてありがとう。それにしても、本当の自分を話せる友達ができてよかった。秘密を抱え込むのって中々辛くてさ。」
「友達……ぼくがですか?」
「他に誰がいるのさ。葉瑠くんのことをおとなしくて引っ込み思案で、不器用な感じがちょっとかわいいな思った時から仲良くなりたいって思ってたんだ。」
「え……えと、こんな陰気でなよなよしているぼくを友達と思ってくれるなんて……なんか夢のようです。ぼく、人と話すのが苦手で、友達なんて今までできたことなかったので……。」
「もうぼくがいるから、友達いない歴はこれで終了だよ。明日からもまたよろしくね!」
「は……はい! よろしくお願いします! あと、よければ今度の日曜日に家の神社に来てください。話の続きをしたいのでぜひ。」
レオは同じクラスで初めて親友になれそうな友達ができたことを心から喜んだ。初めはもっと時間をかけて葉瑠と話せるようになろうと考えていたが、思い切って大胆な行動に出たのが功を奏したようだ。
ところで、今日もレオは勇より先に家に着いて夕飯の仕込みをしたかったようだが、もう間に合いそうにない。
勇のスマホに帰りが遅くなりそうだという内容の文章を送り、急いで駅に向かった。
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