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Uに癇癪
「なぁ、智明。“魂の番”って信じる??」
季節は夏。二年B組の教室の壁にかけられたカレンダーが、七月に捲られて、期末考査が終わった校内から浮かれた空気が漂いだす頃。
いきなり友人のαに顔を覗き込まれ、HR前の帰る準備をしていた男子生徒は、はぁ…と曖昧な返事をする。
嶋智明。α。身長百七十センチ前後。刈り上げられた短い黒髪は、遺伝的なものか根っからの猫毛でパーマをかけたように緩くウェーブしている。年齢にそぐわない、落ち着いた物腰に軽薄そうな横顔。怜悧な瞳に、若干色の悪い薄い唇。高い鼻梁。身に着けているのは、制服である濃紺のブレザー。
教室では、中央の教卓から向かって右の列、前から数えて三番目の席にいる。だから、嶋の席は教室では割と黒板に近い。
「なぁ、なぁって‼ちゃんと話、聞いている??“魂の番”だよ!?」
彼の机に両手を置いて、ぴょんぴょん飛び跳ねるのは、市川良太。α同士波長があう、幼馴染である。
「聞いているって…。」
嶋は頬杖をついて、また一つ息をつく。
「…俺さぁ、“魂の番”に会ったら、真っ先に近くのトイレにでも引きずり込んで、俺だけの番にしてやるんだぁ~‼」
熱く語る友人に、嶋は荒んだ瞳を向ける。“魂の番”とは、運命の相手ともいえるだろうか。種やヒートのあるなしに限らず、視線があった瞬間、双方が恋に落ち、必ずハッピーエンドになるという。…つまりは、伝説である。
あと一点。番になるとは、性行為中にαがΩの項を噛むことである。この行為によって、他者のフェロモンに惑わされなくなる。また、Ωは別の人間の相手が出来なくなるという。
「…そうは言うけど、良太。“魂の番”が、必ずしもΩとは限らないじゃない。」
もう一人の、クラスで同じα…木津大和が突っ込む。市川はあからさま、う゛と唸りをあげる。
「それに良太。一歩間違えたら、その行為は犯罪だから…。」
嶋も木津に賛同し、市川を制する…ところだった。
「番、番って…うるさいな。」
教室の後方から、突如高飛車な声が響き出す。怒鳴りつけるかの如き大きな声にそれまでざわざわしていた教室にいる全員が、そちらに注目した。
男性ソプラノ気味の声の主は、嶋の列の最後尾にいた男子生徒が発したものだった。身長150センチ後半。透けるような白い肌。負けん気の強そうな円らな瞳。色素の薄い髪と目。
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