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「おう。」
そのまま廊下を進もうとした嶋の服を、相手がぐいと引っ張る。
…見ると、相手が嶋の着ている服の裾をちょこんと掴んで、引き留めていた。
「…脱衣所、こっちだよ。奥が浴室になっている。」
よく見ると、すぐ近くに扉があり、嶋はそこを通り過ぎようとしていた。
「あ、ああ。サンキュ。」
「ううん。」
紫の前で、扉を閉める。扉に背を預けた嶋は、そのままずるずると床に沈み込む。
「…何だ、あれ。」
いつしか体育座りになって、男は胸と膝小僧の間に顔を突っ込んでいた。
(小さくオレの服の裾を引っ張ってきたんだけど。)
(紫、小柄だから自然とオレを見上げる体勢になるんだよな。上目遣いっつか…。)
(なんか心なしか、優しくないか??部屋の案内よかオレの希望を先にとってくれたし。)
僅かに顔を上げ、嶋は呟く。
「これは…。」
脳裏に木津の声が鮮やかに蘇る。
『…紫が嶋を好きなんじゃない??じゃなきゃ、嫉妬からのあてつけ。』
(もしかすると、もしかするんでは…??)
ぎゅうっと目を閉じて、嶋は低く唸る。
「マジかよ…。勘弁してくれ。十七年もαとして耐えているんだぞ。」
嶋は一つ息をつく。長く、大きな、いつもの溜息。
「…もう誰も、オレなんかを好きになるなよ。」
七月第四週
熱めのシャワーで体を流すと、べたついた汗の嫌な感じはさっぱりと落ちていく。快適だな、と嶋が考えていた、矢先だった。
「着替え、ここに置いとくから。」
曇りガラス一枚隔てた向こう側、人影がそっけなく言う。ほっそりとした腰に、小さな身体。狭い肩。
(…シルエットじゃ、まんま非力そう…。押し倒したら、体格差で絶対抵抗できないよな…。嫌々する紫を…って、いかんいかんいかん‼)
考えかけて…嶋は速攻で曇りガラスを開けていた。吃驚して口を半開きにする紫の姿に、我に返る。が、再び扉を閉めるわけにはいかなかった。
(色ボケしてんじゃねぇ、オレ‼っつか、紫だってオレだって、男同士なんだからナニかあるわけねぇじゃん‼)
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