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(…なんて、二人の前では余裕の態度でいたが…。)
玄関扉を前に、嶋は溜息を一つつく。
「…甘やかすって、どうすればいいんだ??」
呟いて、青年はことの重大さに額を押さえる。
(つきあったことない年数=年齢、つまりは童貞のオレに、相手を甘やかすだの絆すだの、やったことねぇし、何一つ知らねぇし‼え??どう振舞えばいいのか、まるきり見当つかねぇよ…。)
スッと瞳を開き、青年は背筋を正す。
(…まッ、負けるんじゃねぇ、嶋智明‼考えろ、考えるんだ。オレがこの作戦に負けたら…。)
閉じた瞼の裏。剥き出しの腹筋に座る紫が、腰をくねらせつつ誘惑してくる。
『し・ま…♪身体がガチガチだよ??かわいいなぁ…♪初めてだからって、そんなに緊張しなくていいんだからね…??僕が、αのアンタに“キモチイイこと”ぜぇ~んぶ、教えてあ・げ・る☆ふふ…っ♪』
拳を口元にあて、愛らしく微笑むΩの妄想を掻き消そうと嶋は口を開く。
「いかぁ~んッ‼」
大声をあげ、嶋は我に返る。
(とにかく、あいつにだけは童貞バレしたくない‼)
両頬を手で叩き、嶋は決意をかためる。
「何となくそれっぽくやりゃあいんだ。怖気づくな、嶋。思い込むんだ。紫はオレに夢中。紫はオレに惚れている…っ」
嶋の分厚い手のひらが、金属製のドアノブをそろりと掴んだ…。
「ただいま~…。」
ダイニングに足を踏み込む。すると、目標の家主は奥のキッチンスペース、コンロの前にいた。レースカーテンの向こう、ベランダに通じる窓から見える景色は見事なオレンジ色で、嶋は咄嗟に壁掛けの時計を確認する。午後六時十分過ぎ。カレーのいい匂いが、嶋の鼻先を掠めた。
一度ダイニングから顔を引っ込め、洗面所でうがいや手洗いを済ませてから、いそいそと相手のもとに急ぐ。肝心の紫は、コンロにかけた鍋をおたまでかき混ぜていた。鍋の中身は、やはりカレーだ。鍋を見るとすぐにわかるほど、中の野菜はゴロゴロと大きめに入れられている。食べ応えがありそうなカレーに、紫の背後に来た同居人はごくりと喉を鳴らした。
するり、と紫が出来るだけ驚かないようひっそりと蛇の如く、首に両手を回す。背中越しに抱きすくめると、紫の上体が若干傾いだ。
「…ただいま。」
「わっ。…驚かさないでよ、嶋。おかえり。」
「うん…。」
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